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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

中国のレーダー照射攻撃という敵失を活かせない安倍外交
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン2013年2月7日第102号 ■   ==============================================================   中国のレーダー照射攻撃という敵失を活かせない安倍外交    ==============================================================  きょう2月7日の各紙の報道を詳しく読んでみて、今度の中国のレーダー射撃攻撃の実態が少しばかり見えてきた。そしてそれに対する我が国の対応のまずさもまた見えてきた。  今度の中国のレーザー照射攻撃が習近平国家主席の命令ではなく中国軍の独断行動であった事はほぼ間違いない。これは中国の失態である。  そうであれば日本はその敵失を好機としてとらえその敵失に対する最善の対応を政府をあげて追求すべきであった。  ところが日本側の対応もまた問題があった。  レーザー照射攻撃は民主党政権下でも行なわれていたという。ところが当時の野田首相、岡田副総理らは「日中関係を悪化させたくないとの判断で公表を避けた」(政府関係者)という(2月7日日経)。驚くべき危機感のなさだ。  いたずらに国民を刺激しないためにその時点で公表を避けるのはいい。  しかし中国側に対し何の申し入れもせず、対応策を講じていなかったとすれば驚きだ。  その日本側の不作為こそ中国人民軍をしてレーザー照射攻撃を繰り返させることになったに違いない。  そして安倍政権新政権になっても正しい対応がとれなかった。  中国のレーザー照射攻撃は1月30日が初めてでなく19日にも行われていたという。  そうであればその時点で防衛省は最大の危機意識を持ち、その情報を政府全体に共有し、そして国をあげて最善の対応策を講じるように官邸に迫るべきだった。  安倍新政権は中国との関係改善に向けて民主党政権とは異なるところを中国に示すべきだった。  ところが外務省がレーザー照射攻撃を始めて知らされたのは2月5日の午後になってからだという。  これでは中国と同じだ。外交の余地はなく防衛政策に偏った判断しかできない。  しかも安倍首相は判断を誤った。  中国側にレーザー照射攻撃の危険性を警告しないまま、いきなり公表に踏み切った。「悪質な事案はすべて公表して国際社会に知らしめる必要がある」というわけだ(2月7日日経)。  この判断は習近平国家主席の方針としてレーザー照射攻撃が行なわれた場合には正しい。  中国の方から先に武力威嚇を行なったのであるから、その軍事行動を断固として世界に向けて糾弾すべきだ。  しかし、それを確認することなく公表した。  そしてどうやら中国軍の単独行動の可能性が高い。  そうであれば公表は中国の敵失に塩を塗る事になる。中国をいたずらに追い込む事になる。  そんな事をして中国との緊張関係を高めるよりも、極秘裏に中国側と話をして事態を封印する。そうすることによって中国に貸しをつくる。そういう外交を目指すべきであったのだ。  今からでも遅くない。安倍首相自らが2007年に当時の温家宝首相との会談で合意したホットライン(緊急連絡体制)を今こそ再開し危機を好機に転じるのだ。  いたずらに中国のレーザー照射攻撃を非難し続ければ中国は開き直ってくるだろう。先に攻撃を仕掛けてきたのは日本側だと。中国の行動は自衛に過ぎないと。  そうなれば日中双方は打つ手がなくなり、日中の軍事的衝突の危険性は高まるばかりだ。  今度の中国のレーザー照射攻撃の重大性を一番知っているのは米国だ。なにしろ米国は1998年にイラク軍がレーザー照射攻撃をしてきた時、当時のコーエン国防長官は、これは米国への攻撃だと公言して直ちにイラクの施設を報復破壊した国だ。  だから米国は日中双方にこれ以上エスカレートしないようにこれまで以上に強く求めてくるだろう。中国も今度ばかりは米国の言う事に耳を傾けるだろう。  中国のレーザー照射攻撃という敵失を好機ととらえて外交に活かすことなく、危機回避を米国に頼らざるを得ないとすれば日本外交はあまりにも情けない。  このままでは民主党政権も安倍自民党政権も外交の無能さにおいては何も変わらないということになる。それは安倍首相の本意ではないはずである(了)。 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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