□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2013年2月6日第100号 ■ ============================================================== 中国の射撃レーダー照射に正しく対応するにはどうすればいいか ============================================================== 2月5日に突如として小野寺五典防衛省が記者会見を開き、海上自衛隊の護衛艦が1月30日に中国海軍に射撃レーダー照射されていた事を公表した。 このレーダー照射が軍事的にどのような意味を持つかについては報道が書いている通りであり、軍事専門家が語っている通りだ。 すなわち武器使用に準じる軍事行為であり、軍事的威嚇行為である。 だからこれが事実なら戦争が始まってもおかしおくない深刻な事態である。 しかし、日本政府の対応もメディアの報道も評論家の言葉も、何一つ正しい解決策を提示できないでいる。 大変だ、大変だ、と騒ぐだけである。 中国はとんでもない国だ、けしからん、強く抗議した、というだけである。 その一方で、これを戦争につなげてはいけない、冷静さを失ってはいけない問題を極小化しようとするだけである。 そんなことしか出来ないまま、中国との関係改善のメドはますます遠ざかっていくばかりだ。 驚くべき無策だ。 どうすればよかったのか。今後どうすればいいのか。 その事について書く。 かつて自民党がまだ野党であった昨年の12月に、党首選に出馬した石破幹事長が尖閣問題で中国が先に軍事的行動に出たとき日本はどうするかと問われ、先に軍事行動に出たほうが負ける、国際社会がそれを許さない、と答えたことがあった。 私はこの石破発言を、その通りだと評価したことがあった。 ついに中国は先に軍事的行動に出たということだ。 中国の負けである。 国際法上許し難い暴挙である。 それでは日本はそのような中国の威嚇攻撃に対しどう対応すれば正しいのか。 真っ先に日本がしなければならないのは、それが中国政府の決定、すなわち国家意思に基づいた威嚇攻撃なのか、中国軍の先走った単独行動であるかの見極めである。 私は中国軍の単独行動だったのではないかと思っている。 中国側は沈黙を守っている。日本側からの抗議を受けて、事実確認を急ぎたいとしている。その事を唯一の手がかりに私はそう思う。 そして、もし中国政府が中国軍の単独行為を知らなかったとすれば、あるいは後で知らされていたかもしれないが、少なくとも事前にレーダー照射の許可を与えていなかったとすれば、中国政府はいま不利な状況に置かれているに違いない。日本は外交的に有利な立場にあるのだ。 私が安倍首相であればわが中国大使に命じ、あるいは谷内参与などを特使として、て中国側と極秘に接触し、事実確認をし、そして中国側はおそらく事実を認めようとしないだろうからそれ以上中国側の責任を追及することなく、この事件を決して外に出さない形で今後このような軍事的挑発行動が起きないようにお互いに努力しようと申し合わせて封印することに務めただろう。 中国政府も、もしそれが中国軍の単独行動であれば、そのような善後策に異存はないはずだ。 そうする事によって日本は中国に貸しをつくることができる。 他方においてもし中国政府が国家意思としてレーダー照射をしたならば、あるいは日本側の極秘の申し入れに対し非を認めず、事態の封印にも応じようとせず、日本の方こそ挑発的だと批判して来るようであれば、我が国の対応もまたまったく異なるものにならざるを得ない。 すなわち中国側にその事を事前通報した上で、国際的に中国政府の行動を非難する行動を取るべきだ。そうする事によってこれ以上中国側が軍事的行動をエスカレートできないように牽制すべきだ。 具体的には直ちに国連安保理の緊急会合召集を求め、国連憲章に反する中国の行動を非難し、再発防止を国際社会の支持を得て中国に求めるのである。 そしてその時こそ日本の憲法9条が最強の武器になる。 世界の主要国の中で国連憲章の精神をいち早くを自らの憲法に体現し、武力による威嚇までも明確に放棄している国は他にはないからである。 その日本が言うからこそ説得力があり、中国の応酬にも負けることはない。 残念ながら報道で見る限りは日本政府の対応はおそまつの限りである。 1月30日の事件を今頃になって公表している。 報道によれば、安倍首相も外務省も今になって知らされ、その事実に驚き、あわてて、それを直ちに国民に公表する事を命じているkのようだ。そして国内世論対策として中国側に下っ端官僚レベルのおざなりな抗議をしてお茶を濁している。 公表されても国民は戸惑うばかりだ。 タカ派の国民がいきり立つだけだ。 いきなり公表し中国を非難するのでは中国に恥をかかせるようなものだ。これでは中国側は反発せざるを得ないだろう。 これを要するにレーザー照射攻撃を受けた制服組も文民官僚も、防衛省の初期対応が甘かったのではないか。 それを受けた安倍首相や外務省もまた慌てふためき、その対応に戦略が欠けていたのではなかったか。 中国側との事前の話し合いなしにいきなり今度の公表が行なわれたとしたら、それは不手際だ。 このまま行けばどう考えても日中関係はよくならない。 安倍首相は米国との関係も中国との関係も打つ手がないがごとくだ。 鳴り物入りで期待された谷内正太郎内閣参与の化けの皮が早くもはがれてしまったということである(了)。 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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