□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年10月6日第749号 ■ ============================================================== 中国大使の迷走人事に見る野田首相の無能さとこの国の人材不足 ============================================================== 難航していた中国大使人事が外務官僚の木寺昌人内閣官房副長官(59) に決まったらしい。 報じられていることが正しいとすればこれほど情けない人事はない。 小寺氏の能力をとやかく言うのではない。 それしかいなかったという現実に注目するのだ。 まず私が驚いたのは谷内正太郎、薮中三十二両元事務次官や宮本雄二 元中国大使が激務必至の重責のために固辞したという報道だ。 にわかには信じられない事だ。 主要国大使人事を外務官僚が独占することは組織防衛の要諦である。 乞われて外務官僚にその重責が回ってくるのだからこれを受け入れる のは外務官僚にとって組織防衛のためにも引き受けるべきだろう。 個人的好き嫌いの話ではない。 ましてや断った理由が重責におそれをなしたからだという。 本当だろうか。 谷内も薮中も宮本も、ほかの官僚と同じく出世欲、権力欲が 強いはずだ。 仕事がうまくいかなくても何の責任も取らない厚かましさもある。 恩を売って大使ができるのだ。それを断ったなどということは私には 信じられないのである。 私が不思議に思うのは丹羽前大使の声がまったく聞こえて来ないことだ。 丹羽大使は中国大使を引き受ける時、初の財界出身の大使として張り切 って引き受けたはずだ。 それが失意のうちに任期途中で交代を余儀なくされた。 しかも交代の理由である自らの対中弱腰発言が、結果的には正しかった 事が証明された。 なぜもう一度、大使に復帰して日中関係の回復に尽くしたいと名乗り 出ないのか。 それほど彼は自信を無くしたのか。やる気をなくしたのか。 あるいは彼の再任を右翼の政治家や世論が許さないのか。 その声を恐れた野田首相にははじめからその気がなかったのか。 それを知っているから丹羽大使は再任を言い出さなかったのか。 それにしても今度こそ本物の政治任命が必要ではなかったのか。 続けて財界人を中国大使にすることは不適かもしれない。誰も引き受け ないかもしれない。 しかし政治家という手がある。 もし田中角栄や大平正芳が生きていれば彼らこそ政治任命にふさわしい 大使に違いない。 そう思っていたらきょう10月6日の毎日新聞で松田喬和専門編集委員 が「首相番記者日記」でこう書いていた。 政治家OBを大物大使として起用することを何故考えないのかと。 北方領土問題なら森喜朗駐露大使、福田康夫元首相なら駐米大使でも 駐中国大使でも可能だろうと。 もちろん私はそれらの人選が最善だとは思わない。 森氏や福田氏は高齢だし本人にその気があるかもわからない。 しかし私が言いたいことは主要国大使の究極の政治任命は政治家である ということである。 有力で最善の、現職、OBの政治家を中国や米国、ロシア大使に充てると いう発想がどうして出てこないのか。 これこそが外務省がもっとも恐れる人事である。 究極の政治主導である。 しかもその人物が最善なら中国側はそれを歓迎しただろう。 人事ひとつで日中関係改善のきっかけがつかめたかもしれないのだ。 少なくとも小寺大使では何も変わらない。 彼の能力がだめだというのではない。官僚ではだめだということだ。 なぜ野田首相は千載一遇のこのチャンスにそのような政治任命を考え つかなかったのだろうか。 私はここに野田首相の限界を見る。民主党政権の無能さを見る。そして 日本の人材不足を見る。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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