□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年10月5日第744号 ■ ============================================================== 米国に正しく向かうエジプトのモルシ大統領 ============================================================== 日本ではほとんど注目されていないが、オバマ大統領やクリントン 国務長官が今もっとも関心を持って、その対応に心を砕いているのは 間違いなくエジプトの新大統領であるムハンマド・モルシ大統領に 違いない。 その事を見事に解説してくれた記事を発売中のニューズウィーク日本版 10月10日号に見つけた。 フアド・アジャミ(米スタンフォード大学フーバー研究所上級研究員) が書くその記事はモルシ大統領のエジプトとオバマ大統領のせめぎあい こそアメリカとエジプトの真の関係の始まりであると言い当てている。 その意味するところは、米国に従順だった独裁者ホスミ・ムバラクに代 わり「ソフトなイスラム主義者」が権力を握った今のエジプトにどう対応 するかによって米国の中東外交が試される、今まさにその時であるという 事だ。 アジャミ氏は言う。どんなにモルシ大統領が扱いにくくても、アメリカ はムバラク時代にノスタルジアを感じるべきではないと。 そしてモルシ大統領の言葉を借りて次のように言う。 アメリカは独裁者を援助して手っ取り早く安定を確保しようとしてきた が、それはアメリカの血税で中東市民の嫌悪感を買う事だった、と。 アジャミ氏は言う。モルシ氏はムスリム同胞団の元幹部であると同時に アメリカ文化を身を持って理解する初のエジプト大統領であると。 アメリカに留学し、南カリフォルニア大学で工学博士号を取得し、博士 号取得後もアメリカ残留を希望し、カリフォルニア州立大学で教鞭を執っ た経歴のモルシ氏こそ、手ごわい相手だ。 ムスリム同胞団は確かに常に反米的であるが、モルシのようなエリート 層はエジプトが米国の援助が必要な事を知っている。そのモルシ氏が率いる エジプトのムスリム同胞団は米国の援助を得るためにはある程度信条を譲歩 しなければならない事を理解している。 その一方で米国にとってもエジプトは「大きすぎてつぶせない」国だ。 8000万人以上を抱え、世界の交差点に位置し、アラビア半島とペルシャ 湾の油田に近く、シーア派とスンニ派の国エジプトを米国は敵にまわすわけ には行かない。 それをモルシ氏は知っているからこそ米国の言いなりにならない。 そんなモルシ大統領のエジプトに対して、オバマ大統領やクリントン国務 長官は対等な立場に立って本気で外交を始めなくてはならない。 それは飴と鞭で他国を従属させてきた米国にとって不得手なことだ。 特に米国の中東政策においては初めての経験だ。 しかしそれを今米国は求められている。 米国は初めて本当の外交を行う事を求められているのだ、とアジャミ氏 は書いている。 見事な指摘である。 しかし私が私がこのアジャミ氏の記事で最も印象深かったのはモルシ 大統領の心の中を見抜いた次の言葉だ。 この言葉を紹介したい為に私はこのメルマガを書いた。 「民主的な政府は簡単には米国の言いなりにはならない」。 なんという素晴らしい言葉であるか。この心意気こそ日本の指導者に 求められているものではないか。 日本の政治家にモルシ大統領のような資質をそなえている政治家が 一人でもいたなら、日本の対米外交も少しは自主、自立したものになって いただろう。 今からでも遅くない。 中東の春がエジプトに民主化をもたらしモルシ大統領を誕生させたのだ。 その事が日本にできないことはない。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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