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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

尖閣問題をめぐる日中関係の正しい議論 
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン2012年10月1日第734号 ■   ==============================================================    尖閣問題をめぐる日中関係の正しい議論   ==============================================================      尖閣問題をめぐる今回の日中対立は長期間に及ぶだろう。少なくとも 野田民主党政権が続く限りよくはならない。  自民党政権となっても直ちに解決する保証はない。それどころか対応 次第ではさらに悪化する。  もはや尖閣問題はそれほど深刻な問題となってしまった。  尖閣問題の本当の解決には正しい歴史認識に基づいた大きな政治的決断 が必要である。  どうすればいいのか。そのヒントがきょう10月1日発売の週刊現代 10月13日号の孫崎享元外交官と川村晃司テレ朝コメンテーターの対談 の中にある。  これまでに私が目にし、耳にしてきた議論の中でもっとも私の考えに近 い対談内容だ。  以下私の解釈を含めてその対談の要旨を紹介したい。  1.この問題の解決は棚上げしかない。棚上げの意味するところは何も しないという事ではない。領有権を主張する事を敢えて行わず、現状の 維持をお互いが厳守するということだ。  2.明文化された合意がないからといって棚上げの合意はないと言い張 る議論があるがそれは大きな間違いだ。72年の日中共同声明や78年の 日中友好平和条約の交渉過程において日中指導者たちの政治的な了解は確 かにあった。  3.今回の中国の激しい反応は日本が国有化宣言をしたことがこの棚上げ 合意に違反したと映ったからだ。    その責任は野田首相にある。国有化して現状維持を守ろうとした野田 首相の判断自体は正しいと思うが、そうであればこそ事前に中国側に十分 説明し、説得しなければならなかった。  それを怠り、石原都知事とコソコソと連絡をとったり、胡錦涛国家主席 との立ち話で国有化反対の意向を告げられたにもかかわらずその直後に国有 化宣言をするという不手際がここまで中国を怒らせた。  4.野田首相を誤らせたのは民主党政治家と外務官僚の無能、無策、怠慢 だった。日中関係の歴史と微妙さを知っている政治家は自民党にはいても 民主党にはいない。野田首相の適切な助言ができる政治家が民主党には いない。外務官僚も過去の経緯を知って野田首相に正しく知恵を授けられる 者はいない。これでは危うい。  5.日中関係の改善には日米同盟の強化が必要だと繰り返す事は尖閣問題 の解決になんら資することがないばかりかマイナスでさえある。  米国が尖閣を日米安保条約5条の対象に含めると繰り返す事をもって米国 がいざという時に日本を守ってくれると主張することは大きな間違いである。  安保条約に日本を守る義務はないし、米国自身が尖閣問題には中立の立場 をとると繰り返している。日中間で解決しろと言っているのだ。  6.日中問題に対する米国の曖昧さの背景に気づかなければいけない。 米国のダブルスタンダードをしらなければいけない。  日中関係の強化は米国への脅威であり米国はつねに日中離反政策をとって きた。その一方で米国は対中包囲網を強調して日米同盟重視を唱える。日本 は米国の本音を見極めた上で日本にとっての最善の対中外交を確立しなけれ ばならない。  7.最後にここが一番重要なところであるが、棚上げは当面は効果がある かもしれない。しかし国力のさらなる強化とともに、中国のほうから一方的 に棚上げを変更し領土保有の行動に出てく時が来るかもしれない。  実はこの時こそ日本の対応が問われる時なのである。その時に備えて日本 はいまから何が最善の対応であるかについての国民的合意を作っておかなけ ればいけないのである。                              了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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