□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年9月29日第725号 ■ ============================================================== 「領土問題は存在しない」という方針を撤回させられる日本 ============================================================== 9月29日の産経新聞が報じていた。 中国外務省の報道官が28日の定例会見で、「われわれは日本に対し、 早く領土問題(に関する)争議があることを認め、対話を通じて問題を 解決するよう求める」と語ったと。 私が驚いたのはその後に続く産経新聞の見方だ。産経新聞はこう書い ている。 「・・・日本政府が『尖閣諸島に領土問題は存在しない』と言う公式 見解を放棄すれば、中国は関係回復に向けた交渉を始める用意があると の姿勢を中国政府関係者として初めて示した・・・」 本当だろうか。もしそうだとしたらさっさと「領土問題は存在しない」 などというこれまでの方針を捨てて中国側と交渉すべきだ。 同じような事を中国帰りの米倉経団連会長が語っている。 「中国がこれほど問題視していることで、日本側が問題がないという のは理解しがたい。民間の交渉なら通らない。あまりおっしゃってもら いたくない」 もっともこの経団連会長の発言に岡田副総理は即座に反発している。 「やや、驚いた。国家間の厳しい交渉の問題で(経団連会長と言う) 立場のある方が軽々に言われることではない」と述べ強い深い感を示し たと報じている(9月29日朝日)。 岡田副総理の気持ちは分かる。 大企業の論理を政府に押しつけるような発言ばかり繰り返してきた米倉 氏がいまそんな事を言ってみても、中国に迎合して金儲けを優先する発言 だと言われるのがオチだ。 私も米倉氏の発言を批判ばかりしてきた。 しかし、この米倉氏の発言に限っては正しい。 なぜ日本政府は「領土問題は存在しない」などという硬直した原則論を 繰り返してきたのか。 それは外務官僚が世論におされて原則論を繰り返さざるをえなかった からだ。 わかっていながらそれが出来なかったのだ。 世論とはもちろん右翼世論である。 この事を見事に証明してくれたのが宮本元中国大使の次の言葉だ。 いつかのメルマガでも書いたが彼はかつて新聞紙上でこう語っていた。 領土問題はないと言う原則論を言い続けて来たがその言葉で随分苦労 させられてきたと。 世論を説得する政治力がないと物事は進まないと。 日本外交の硬直性を見事に認めた発言だ。 官僚には世論を動かす影響力も度胸もない。 それがあるのは政治家であるが政治家は官僚を超えた外交をしようと しない。 どうどうめぐりだ。その結果の原則論外交である。 もはや原則論外交では尖閣問題は何も動かない。 中国側に言われてこれまでの原則論を捨て去ることは残念だ。 財界人に言われて原則論を捨てるのでは政治家も官僚も情けない。 しかしそれでも「領土問題は存在しない」という硬直したこれまでの 方針は一刻も早く捨てたほうがいいのである。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
新しいコメントを追加