□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年9月18日第670号 ■ ============================================================== 樋口広太郎元アサヒビール社長の訃報記事が封印したある事実 ============================================================== アサヒビールの元社長である樋口広太郎氏が逝去された。 それをきょう9月18日のメディアが一斉に報じている。 なぜメディアが彼の事を一斉に報じるのか。 それは彼が東証上場の大手企業の元社長だからだ。 住友銀行の重役から畑違いのビール会社社長に転じた後、スーパー ドライをヒットさせてアサヒビールをビール業界のトップにさせた立志 伝中の人だからだ。 おまけに歴代の内閣で特別顧問や各種の政府諮問会議、懇談会などの 議長、座長をつとめ政策づくりに貢献したからだ。 訃報記事はこれらを判で押したように書いている。 しかし、そのような樋口氏の功績の一つに重要なものがある。 ところがそれを書いた記事はない。 私が見渡した限りでは唯一それを詳しく取り上げたのが朝日だ。 すなわち9月18日の朝日新聞は樋口氏の訃報を報じる記事とは別に 「評伝」という特別記事を掲げ、その中で次のように言及している。 「・・・活動の舞台は、安全保障分野にも及んだ。94年、細川護煕 首相(当時)の私的諮問会議「防衛問題懇談会」の座長となり、防衛計画 の大綱見直しに着手。『樋口レポート』と呼ばれる報告書を出した。 冷戦後の日本の安全保障政策の基本的な考え方をまとめたもので、国連 の平和維持活動への自衛隊の参加など、その後の防衛政策に大きな影響 を与えた・・・」 ところがこの朝日新聞の記事には意図的に隠された重大な事実がある。 確かに樋口レポートは国連の平和維持活動への自衛隊参加を提言して いる。 しかし樋口レポートで提言された最も重要な部分が完全に無視され葬 り去られたという事実があるのだ。 樋口レポートの最も衝撃的な部分は日本の安全保障を確保する政策と して日米同盟よりアジアの集団安全保障体制の構築を優先させたことだ。 すなわち日本の安全保障は日米安保体制で守るという日米同盟最優先 論が当然視されて来た中で、はじめて中国や韓国との東アジア集団安全 保障体制を日米同盟より優先させる提案を行なったのだ。 これが米国を刺激した。 日本政府を狼狽させた。 おりから起きた沖縄少女暴行事件をきっかけに在日米軍縮小、撤退論 が沖縄で燃え盛った。 危機意識を持った米国と日本政府は、すかさず冷戦後のあらたな日米 同盟構築を打ち出した。 いわゆナイレポートとそれを具現化した日米同盟再定義である。 それが今日に続く世界平和のための日米軍事同盟、すなわち米軍再編に 対する日本の絶対服従、日米軍事一体化である。 樋口氏は日米両政府にとって好ましくない人物という烙印をおされ、 かつて石原慎太郎とともに「NOといえるジャパン」を共著したソニーの 盛田昭夫氏と同様に、失意の下にメディアから消えていった。 朝日がその事を知らないはずはない。しかし決して書かない。 日米同盟に少しでも疑義を挟む者は、それまでどんなに影響力のある者 であってもたちどころに排斥されるのである。 そしてその事は死してなおつきまとうのである。 樋口氏の訃報の記事が教えてくれるもっとも重要な事は、誰も書かない この厳然たる事実である。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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