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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

日朝賠償密約をすっぱ抜いた産経のスクープに思う
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン2012年9月18日第671号 ■   ==============================================================    日朝賠償密約をすっぱ抜いた産経のスクープに思う  ==============================================================  きょう9月18日の産経新聞が小泉訪朝10年を迎えた今、満を持し たように一面トップで大スクープ記事を掲載した。  すなわち2002年の日朝平壌宣言の裏で、「北朝鮮側が拉致を認める ことと引きかえに日本側が戦後賠償として1兆円を超える経済協力資金を 提供する「密約」があったと書いたのだ。  この事は当時の雑誌や三流紙で憶測記事としてさんざん報じられた。  しかし大手新聞が一面トップで掲載したのはこの産経新聞がはじめてだ。  私がこの産経新聞を読んで驚いたのは、日本政府がこの経済協力の話を 否定していなかったという事実だ。  それどころか日本側の公式資料である「外務省資料」によれば日本側が 国交正常化の代償として資金を提供する提案をしていた事を認めていると いう。  すなわち日本側はこれまで「資金協力の規模」については協議してい ないと否定していただけだという。  それが事実なら、産経新聞が報じるこのスクープ記事は、経済協力の 約束をしていた密約のスクープではない。  北朝鮮側が300億ドルから400億ドルの要求をしたのに対し日本 側が114億ドル(約1兆3000万円)の金額をオフアーしていたと いう金額についての密約スクープということになる。  私は密約のすべてが悪いとは思わない。  それが国民の為になることであればどのような手段でも実現し、それが 奏功したあと国民に理解を求めればいいのだ。国民もそれを許すだろう。  これまでの密約が許せないのは、それがことごとく反国民的であった からだ。バレなければ嘘を最後まで隠そうとする密約だったからだ。  バレてもそれを認めない密約だったからだ。  1兆300億円と3兆―4兆円の金額の差は確かに大きい。  しかしそれは交渉次第だ。  拉致問題と国交正常化の包括的解決が本当に実現できるのであれば、 もはやそのような金額の開きは交渉の範囲内だ。  どうして野田首相はもう一度小泉首相が出来なかった北朝鮮との日朝 協議をみずからの政治的決断で行なおうとしないのか。  藤本料理人は9月17日の毎日新聞紙上で次のように舞台裏を激白 している。  すなわち日本政府にその気があれば喜んで親書を渡す積もりであった 私に政府高官は出発を一週間遅らせるように指示して来た。だから9月 1日予定の出発を9月7日に遅らせた。ところが野田首相から「日朝 協議が課長級から局長級に上がる。官僚の頭ごしにトップ同士の話を したいという要請は出せない」と言われたとその高官が言ってきた。 手ぶらで行かざるを得なくなった上に金正恩との約束も守れなかった。 入国ビザはついに発給されなかった。私は架け橋になれなかった、と。  要するに野田首相は外務官僚の顔を立てて外務官僚に丸投げしたのだ。  それではその外務官僚は何をしたのか。  それを見事に教えてくれる記事を9月17日の東京新聞に見つけた。  日朝平壌宣言10年の特集記事の中で次のようなくだりがある。 「・・・別の要件で(おそらく尖閣問題で)北京を訪問した外務省の 杉山晋輔アジア大洋州局長は、北朝鮮が突然『協議に応じる』と通報 する可能性に備え、着替えを多く持って行ったが、北朝鮮からの連絡 はなかった・・・」  笑い話だ。見通しも何もなくその場限りの勝負で外交をやっている。  竹やりで米国に突撃して行った戦前の日本政府と同じだ。  そんな外務官僚に丸投げして自らの政治決断を行なわない野田首相 では拉致問題はおろかあらゆる外交は行き詰まる。  しかし野田首相が拉致問題の解決を急げない本当の理由がある。  それは米国より先に北朝鮮との国交正常化を日本が行なう事を米国が 許さないからだ。  米国は北朝鮮の核問題の解決を最優先する。  だから六カ国協議で日本をがんじがらめにして拉致問題を先行させ ないのだ。  見ているがいい。  米国は北との核交渉が進展すれば日本の頭越しに米朝国交正常化を行 なう。  北朝鮮の核問題は米国にとって安全保障の問題ではない。  テロに核を渡さないという問題なのである。  北朝鮮が核兵器を持ってもそれがテロに渡らない事が確保されれば 米国にとっては問題ないのである。  日本は米国に命令されて北の核ミサイルの脅威を言い立てる。  馬鹿を見る役回りをさせられている。  そんなことより拉致問題と国交正常化の包括決着こそ日本が最優先 すべきなのだ。  しかしそれを野田首相に求めるのは無理な相談なのである。                               了  ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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