□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年6月6日第436号 ■ ============================================================== 米国の自動車市場開放要求に反論したトヨタ社長 ============================================================== 6月5日の朝日新聞に、日本自動車工業会の新会長に就任したトヨタ 社長豊田章男氏のインタビュー記事が掲載されていた。 驚いたのはそのインタビューの中で豊田社長が米国に反論していた ことだ。 すなわち、TPP参加の事前交渉において米国が自動車分野の市場開放 を執拗に要求していることに対し、「米側の主張には大変困惑している」 と語ったのだ。 その意味するところはこうだ。 すなわち日本は輸入車にかかる関税はとっくにゼロにしている。もはや 規制のないオープンな市場だ。それなのに米国の言う日本の非関税障壁と は何を指すのか。いまだ米国から公式にそれを聞いた事がない、と。 トヨタの社長がここまで言うのは余程の事だ。 周知の通り1980年代の自動車摩擦以来、トヨタは米国との関係を 日本政府以上に重要視してきた。 あの対米輸出枠を規制する交渉の時でさえ、自由貿易を理由に数値目標 設定には応じられないと突っぱねた橋本通産大臣(当時)を尻目に、裏で こっそりトヨタは米国政府と直取引をして輸出規制枠受け入れを合意して いた。 つまり米国の要求を突っぱねて米国の怒りを買い、経済制裁を課されて トヨタの稼ぎ頭のレクサスを輸出できなくなってはたまらない、少しぐら いの輸出規制のほうが損は少ないというわけだ。 以来トヨタの対米追随は決定的になっていく。 そのトヨタが今度の米国の自動車市場開放要求は理解できない と反論したのだ。 なにが起きたのか。 それを見事に解説してくれたのが6月5日の日経新聞の「真相 深層」 という解説記事である。 その記事によれば、米国の要求は、わざと応じられない理不尽なものを ぶつけて、日本をTPPに参加させないようにするためだという。 どうりでトヨタの社長ならずとも、その要求の意味が理解できないのだ。 なぜ米国自動車業界は日本のTPP参加を拒むのか。 それは米国は国内自動車産業を守るために自動車に関税をかけているが 例外なき関税全廃を謳っている米国としてはそれを続けることは出来ない。 しかし関税を撤廃するとTPPに日本入ってきたら、競争力で日本に 負けてしまう。 とくに25%もの輸入関税に守られている米国のトラック業界は、関税 ゼロになれば日本車に勝ち目はない。 だからといって米国自動車業界だけを高関税で守るわけにはいかない。 いっそのこと日本がTPPに参加できないようにすればいいのだ。 これである。 繰り返して言うように米国の自動車業界は日本のTPP参加を阻止したい のだ。 だから日本が入って来れないような難しい注文をどんどんと出してきて、 いるのだ。 無理難題の加盟条件を課して日本の参加ができないようにする。 おまけにその条件に反対する日本は保護主義の国打と貶めることが できる。 一石二鳥なのである。 トヨタ社長がわけがわからないと困惑するのももっともだ。 ところがオバマ大統領はこの事実をもちろん知っている。 しかし今年は大統領選挙の年だ。 劣勢が伝えられているなかで自動車産業界の票は大きな魅力だ。 論理をねじまげてでも日本への要求を高める。 これを要するにTPPの本質は自由貿易の促進でもなんでもない。 米国の内政のために日本が利用されているだけなのだ。 馬鹿馬鹿しい。 この事をメディアは声を大事して国民に伝えるべきだ。 さすがの日本国民も目が覚めるだろう。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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