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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

シリアをめぐって分断される世界と日本の役割
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年6月6日第437号 ■   ==============================================================   シリアをめぐって分断される世界と日本の役割  ==============================================================  シリア情勢について書こうと思いながら書きそびれてきょうまで来て しまった。  書くことが多く、1000字ほどのこのメルマガで書き尽くすには複雑 過ぎるからからだ。  しかし、今書かなければ時期を失うので問題提起だけしておく。  シリア政府は5日、主要国の外交官受け入れを拒否すると発表した。  これは先般欧米主要国が大使引き上げを決めたことに対する報復措置だ。  しかしこのような状況は国際政治上前代未聞だ。  どうやらシリア情勢は最終的局面を迎えつつある。さらなる悲劇が予想 される。  シリアのアサド政権は独裁者が次々と失脚していった後に残った中東に おける最後で最悪の独裁者である。  それを倒そうとする反シリア体制なるものが、欧米の策略で動いている などという陰謀論を時々見かける。  私はこれは誤った認識であると確信しているが、たとえそういう要素が、 あったとしても、レバノンでアサド政権を見てきた私から言わせると、 もはや今のアサド政権は一刻も早く打倒されなければならない悪であり、 それに徒手空拳で闘っている多くは、独裁に苦しめられたシリア国民で ある。  それを助け、アサド体制と闘う反体制を私は断固支持する。  なぜシリアのアサド政権がここまで非人道的な国民弾圧を繰り返して いるのに国際社会は手を打てないのか。  それは欧米、アラブ諸国と中・ロの反対があるからだ。  アサドが如何に軟化のふりをしようとも、シリア情勢はアサド追放なく しては真の解決はない。  確かに米国と中露のいずれも自国の利益に基づいた思惑がある。  必ずしも人道的な動機のみで動いているわけではない。  しかしこの場合、私は米国を断然支持する。  すくなくともシリア国民の立場に立ち、シリア国民のこれ以上の犠牲を 避けようと本気で考えればアサド政権の側に立つ正当な理由はない。  残念ながら直ちにシリア情勢が好転することはないようだ。  きょうの各紙が一斉に報じている。プーチン大統領が訪中し対米警戒で 共闘する動きを示している。  北大西洋条約機構(NATO)に対抗すべく上海協力機構強化を確認し、 その首脳会議にアフガンがゲスト参加する。  米と中露との間で世界が再び分断されつつある。  しかし、これはかつての冷戦の再来ではない。  もっと複雑で深刻だ。  これはイデオロギーの対立ではない。国益を追求した対立だ。  あるときは手を結び、ある時は激しく対立する。それ故に外交力が 試される。  その対立が万が一武力行使に至る危険にまで発展しても、冷戦の時と は決定的に違う事がある。  それは兵力の高度化(核ミサイルの拡散)と中国軍事力の強大化だ。  もはや大国間の軍事衝突はありえない。  あったとしたら勝者のない人類の自滅である。  その意味でも外交力が試される。大国間では外交力しか紛争解決の道 はないのである。  そんな中でベルギーの外相がシリア情勢で発言した。  6月5日の毎日新聞が報じている。  「シリアの暴力停止のために武装した停戦監視団を送るべきだ」と毎日 新聞の取材に応じた。  「武装した」といえば聞こえは悪いが国連軍による平和維持活動である。  中露の拒否権発動でシリアへの制裁は麻痺したままだ。  しかし国連平和維持活動は制裁とは違う。  それさえも国連が出来ないとなると、文字通り国連は世界の紛争に対し てまったくの無力であることになる。  それは国際社会を軍事力を頼みとする昔の世界に逆戻りさせることで あり憲法9条の根拠が失われることになる。  人類の後退だ。  日本こそシリア情勢にもっと大きく発言すべきだ。  ベルギーの外相の発言こそ日本が発信すべきことなのだ。  みせかけの国連維持活動に自衛隊を派遣するという内政ばかりに うつつを抜かすのではなく、日本の憲法9条を守り、それを世界に 発信するためにも、これ以上シリアの犠牲を出さないためにも、本物の 国連平和維持活動の重要性を訴えるべきだ。  憲法9条を持っている日本がそれを言えば反対できる国はない。  残念ながらこの発想は、決して森本敏防衛大臣からは出てこない。                                 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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