□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年6月4日第434号 ■ ============================================================== 森本敏(もりもとさとし)防衛大臣任命をどう評価すればいいか ============================================================== 読者から森本敏(もりもとさとし)防衛大臣の起用をどう思うかという メールが多く寄せられた。 ともに外務省で仕事をした私にしか書けない評価を書いてみる。 私にメールをくれた読者は、日米同盟最重視の論客の一人である森本氏 が防衛相に任命されたことにより、今後一層日本が対米従属になることを 懸念する。 よりによってそのような人物を民間起用した野田首相の正体を見てあき れ果てる。 その思いは私もまったく同感だ。 しかし私の評価はそれにとどまらない。 私はこの人事が裏目に出ると思っている。 野田首相が本気で日米同盟深化を行ないたいのなら、より好ましい民間 起用者が他に多くいたはずだ。 なぜ森本氏ではだめなのか。 その理由は3つある。 一つは、逆説的に言えば、彼が自他共に認める日米同盟最優先論者で あるからだ。 すなわち親米保守、対米従属論者であるがゆえに、米国はそれを当然視 し、その期待を裏切ると強い反発を示すだろう。 それを知っているからこそ森本氏は米国に従属せざるを得ない。 その一方で、彼が何を言っても、やっても、左翼的な人々からは対米従属 だという色眼鏡で見られるのが落ちだ。批判されるのが落ちだ。 これを要するに、彼は従来の政権が行なってきた対米従属政策以上の事も それ以下の事も出来ないのだ。 しかしそれは何も森本氏に限らず、すべての親米保守論者が防衛大臣に なった時の共通するジレンマではないかという声が聞こえてきそうだ。 それに答えるのが以下の通りである。 二つ目に、彼は本当の意味での親米保守、日米同盟論者ではないという ことだ。 イラク開戦時に米国の攻撃を支持したかと思えば、それが行き詰まって 米国が立ち往生するや、米国は間違っていたなどと言い出す。 普天間基地移転問題がどうにもならなくなったのを見て、もはや普天間 基地移転の強行は無理だと言いだしていたのに、防衛大臣に就任するや 普天間基地移転しかないと言う。 要するに信念を持った定見がないのだ。 その場の雰囲気と相手を見て言う事を簡単に変える言論界の八方美人な のである。 素人相手のテレビ評論ではそれでいいかもしれないが、日本の国防政策 を企画・立案し、内外の様々な圧力の中で敢然とそれを実施するなどと いう事は彼にはできない。 この意味でも彼にはこれまでの政策の域を超える事はできない。 そして三番目に、これが最も大きな彼の限界であるのだが、彼はその 官僚としてのキャリアにおいても、学者としての業績においても、この国 の支配体制の中では決して一流でないという厳然とした事実だ。 官僚といい、御用学者といい、この国の親米保守を名乗る自称スーパー エリートたちの間の競争意識は凄まじく、卑しいものがある。 彼らの多くは、政治任命されて防衛大臣になるのは真っ先に自分だと うぬぼれて四股を踏むものばかりだ。売り込もうとしている連中ばかりだ。 それを差し置いて森本氏が任命された。 それに対する嫉妬心と反発心は想像にあまりある。 おまけに、それに加えて政治家の反発がある。 保守政治家にとってもっとも魅力ある国防担当の閣僚のポストを民間人 に奪われる。耐えられない思いが旧自民党政治家の間から起きる。 おそらく森本氏の今の心境は、「俺で本当にいいのだろうか」という ものだろう。 数あるコメントのなかで舛添要一の次のコメントが的を得ている。 さすがにテレビタレント経験者である。 「防衛相人事は国会でのクイズ番組のような細かい質問に答えるため、 最適回答者を求める感覚で選んだのではないか。森本敏さんにとっても 不幸だ・・・」 森本防衛大臣は、結局何もできないままに野田政権とともに間もなく 終わることになるだろうと思う。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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