□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年6月1日第420号 ■ ============================================================== イスラエルとの関係を重視する中国 ============================================================== 6月の最初のメルマガは、本来の私に戻って最近の中東情勢について 書いてみたい。 きのう(5月31日)の産経新聞で元外務官僚の宮家邦彦氏が「イスラ エルと組む中国」と題して貴重な指摘をしていた。 すなわち、日本ではまったく報道されていないが、中国の南京市の トップである楊衛沢党書記がイスラエルの首都テルアビブを昨年12月 についで先週も訪れたという。半年で二度目であるという。 その理由は世界で有数の起業家精神を持つイスラエルに学べという わけだ(イスラエルにはナスダック上場起業が60社もある。これは 日本の10倍であり、人口700万人余の国では驚異的な数字だ)。 1962年生まれの次世代を担う中国の党幹部は、中国の未来は ハイテク産業にあると見て、世界でも有数のハイテク産業国家・民族と 連携しようとしているのだ、と。 これが宮家氏の言う「イスラエルと組む中国」の意味である。 そして宮家氏はこう締めくくっている。 このままでは間違いなくイスラエルと組んだ中国が日本を追い越し ていく。それが現実になってからでは遅い。日本もイスラエルとの関係 を重視し、中国に遅れをとってはいけない、と。 いかにも米国・イスラエルとの関係を重視する外務官僚の言いそうな 事だ。 しかし中国がイスラエルとの間で良好な関係を持とうとしている事は 事実である。私も知っている。そしてそれを懸念している。 しかし私は宮家氏とはまったく違った観点からイスラエルと中国の 関係の緊密化を懸念している。 それはどういう事か。 中国がイスラエルとの関係を重視するあまりパレスチナ問題に目を つむり、イスラエルの政策を容認するようになれば、パレスチナ問題の 公正な解決は永久に望めない。 パレスチナ人は救われない。 エジプトの大統領選挙がなぜこれほどまでに大きな問題になっている のか。 シリアのアサド政権はなぜここまで暴虐の限りをつくすことが許され るのか。 すべてはイスラエル問題に帰着する。 エジプトに本当の民主政権ができれば、それは必然的に反米、反イス ラエル政権となって都合が悪いからだ。 アサド政権が民衆の手で倒されればシリアが混乱して米国やイスラエル にとって都合が悪いからだ。 今でこそ米国はそのあまりの残虐ぶりにアサド政権を見限ろうとして いるが、シリアは長い間、米国、イスラエルにとっては都合のいい国で あったのだ。 ロシアに至ってはシリアのアサド政権は完全にロシアの同盟国と考え ている。 世界の強国がこぞってイスラエルとの関係を重視するようになれば、 誰もパレスチナ問題の公正な解決なんか考えなくなる。 パレスチナ人の虐殺は永久になくならない。 私がイスラエルと中国の緊密化を懸念する理由はそこにある。 日本という国が、いやしくも人権や平和を何よりも重視する国であると 言うならば、対イスラエル外交においては、中国と競い合うのではなく、 中国とは違ったものを目指すべきなのである。 了 おしらせ 5月26日に有料メールマガジン読者限定で生配信した「天木×植草の 時事対談」についてアーカイブ動画の販売が以下の通り開始されました。 ●サタデーナイトライブ 天木×植草の時事対談 http://foomii.com/00057/2012052815000010123 【販売価格:315円(税込)】 ダイジェストはこちら ⇒ http://bit.ly/LuxRKE ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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