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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

三菱東京UFJの対イラン口座凍結解除の報道が意味するもの
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年5月26日第408号 ■   ==============================================================   三菱東京UFJの対イラン口座凍結解除の報道が意味するもの  ==============================================================  きょう5月26日の各紙は一斉に報じている。  三菱東京UFJ銀行は25日、日本国内にあるイラン政府の関連資産 の口座凍結を解除したと。  これは二つの意味で非常に大きな意味をもつ。  一つは三菱東京UFJ銀行が口座凍結を解除した理由である。  決して米国とイランの関係が改善したからではない。  米国が対イラン制裁を解除したからではない。  そもそも三菱東京UFJ銀行がイラン政府の口座を凍結したのは ニューヨーク州地裁の指示に基づくものであった。  すなわち1983年にレバノンで起きた米海兵隊司令部爆破事件の 遺族がニューヨーク州地裁に損害賠償提訴を行ったため、その財源確保 を理由にニューヨーク州地裁が5月2日に三菱東京UFJ銀行に対し、 イラン政府・中央銀行の資産凍結を指示したのだ。  これに対し三菱東京UFJ銀行は日本とイランの貿易決裁の7-8割 を握っており、このままではイラン原油の輸入が止まってしまうという 危機意識でニューヨーク州地裁に異議申し立てを行い、受理されてた。  今度のイラン政府の口座凍結解除は、米国連邦地裁が三菱東京UFJ の異議申し立てを認めために晴れて凍結解除したものである。  注目すべきは三菱東京UFJの異議申し立ての内容とそれを米国連邦 地裁が認めたという事の驚きである。  すなわち三菱東京UFJは「米国の法律の効力が日本国内までおよぶ のは不当である」と正面から異議を申し立てた。  そしてそれに対し、「ニューヨーク州地裁が行なった三菱東京UFJ 銀行に対する米国外の資産に対する差し押さえ命令は無効である」と 米国連邦地裁が判断を下した驚きである。  米国はこれまで何度となくに国内法を外国企業に一方的に適用し、 それを日本は当然のように受け入れてきた。  しかし今度の連邦地裁の判決は、そのような米国の日本企業に対する 一方的な要求は不当だと判断を下したのだ。  この意味は大きい。  しかし今度の三菱東京UFJの口座凍結解除の持つもう一つの大きな 意味は、対米従属の日本政府に頼ることなく、一企業が自らの手で権利 を主張し、それを米国に認めさせたということである。  三菱東京UFJ銀行がニューヨーク州地裁からイラン口座凍結の 命令を受けた事が明らかになった当時の5月18日の毎日新聞は 政府内の対応につき次のように書いていた。  政府は17日、対応策を協議するため関係省庁の局長級会議を 首相官邸で開いた。しかし、事態の打開につながる対応策は出ず、 「問題解決には時間がかかりそうだ」(「関係筋」という。会合には、 財務省や金融庁、外務省、経済産業省、資源エネルギー庁の局長職員 らが出席し、資産凍結までの一連の経緯のほか、三菱東京UFJ 銀行が地裁に異議申し立てたことが報告された・・・  さらにまた5月18日の日経新聞は藤田幸久財務大臣の記者会見の言葉 を引用しその時の日本政府の対応を次のように報じていた。  ・・・政府内には決裁停止が長引く可能性を指摘する声もある。財務省 の藤田幸久副大臣は記者会見で「外交問題でもあるので、慎重に、色々な 方面からの対応を講じていく必要がある」と述べたが、政府が司法当局に 直接要請するわけにもいかず、正面に出にくいのが実態だ・・・  これを要するに政治家や官僚たちは泣く子と地頭には勝てないとばかり 雁首をそろえてオロオロするばかりだった。  このような政府の対応とは対照的に民間企業の危機感は切羽詰ったもの があった。  政府には期待できないとして直接裁判所に異議を申し立て、政府が時間 がかかるとあきらめるなかで、あっというまに勝訴したのだ。  日本の政治家や官僚たちは役立たずを証明され、とんだ恥をかいたと いうことだ。  どおりで三菱東京UFJの凍結イラン口座の解除のニュースは快挙で あるのに、どの報道も小さく報じて誤魔化そうとしているように見える。                                                               了 ─────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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