□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年5月19日第395号 ■ ============================================================== 谷内正太郎元外務次官の発言とマハテール首相の反論 ============================================================== 5月20日の朝日新聞に、さる4月25日に大阪で開かれた関西・大阪 文化力会議なるものの模様が掲載されていた。 そこにかつての同僚であった谷内正太郎元外務事務次官がパネリストの 一人として出席していて、その発言要旨が紹介されていた。 それを読んで、次のように彼が語っている事を知って驚いた。 「外交において文化の力はとても大事だ。しかし、外交で考えると、軍事力 で強制するハードパワーと、文化的な魅力や説得力などのソフトパワーを 賢く組み合わせたスマートパワーが重要だ・・・」 ここまではまだいい。 問題はその後に続く次の言葉だ。 日米関係を堅固なものにした上で中国と向かい合っていかなければいけ ないとした上で次のように述べているのだ。 「たとえば、中国が尖閣諸島を占拠したら、ソフトパワーで世界に呼び かければ、中国が引き揚げるというものではない。こちらも物理的に対処 する必要がある。ハードパワーを背景にして説得する体制をつくっておか ないと国民が不安になる。文化も大事だが、ハードの部分も忘れてはいけ ない・・・」 驚いた。 中国に対し、紛争を武力で解決する用意があることを見せつけろと言って いるのだ。 このような考えは決して外務省の考えではない。 先輩たちの苦労を否定するものだ。 彼が外務官僚の時にはこのような発言をしたことはなかった。 それが外務省を辞した途端、本音が出てきたということだ。 このような考えを持つ有識者は日本には多いことを知っている。 このような考えが人口に膾炙する考えであることも分かる。 しかしこのような考えこそ日本は克服しなければならないのだ。 それが憲法9条を持って生まれ変わった日本なのだ。 その会議に出席していたマレーシアの元首相であるマハティール氏が 次のように基調演説で述べていた。 「・・・東アジアにおける問題のひとつは、第二次世界大戦の日本に対する 不信感と憎しみがいまだに続いていることだ。日本は何度も謝罪したが、時の 指導者が大戦における日本の役割を誇張しようとする度に、架け橋を築こうと するそれまでの努力が無駄になってしまった。日本には戦争を行わないという 憲法があり、守るべきだ。戦争は忌むべきもので国家間の紛争を解決するもの ではない。日本の文化として他国に輸出できる価値だと思う」 見事な反論だ。 もちろんこれは谷内氏に対する直接の反論ではない。 マハティール首相の発言は基調演説のなかで行われているものだ。 谷内氏の発言の前に行われていたのかもしれない。 しかし私にはこのマハティール首相の言葉はあたかも谷内氏を諭しているように 聞こえる。 お前が言うべきはこのことだと。 アジアを代表する偉大な政治家と日本の官僚の格の違いを見せつけられる 思いだ。 谷内氏は早稲田大学日米研究機構の教授に天下っている。 教えられる学生は気の毒というほかはない。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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