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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

これがパレスチナ問題の現実である     
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン2012年2月15日号外 ■     =========================================================    これがパレスチナ問題の現実である                                                                    ========================================================  パレスチナ問題のいまを知りたい読者には、アル・ジスル-日本 とパレスチナを結ぶ(略称JSR)という組織が定期的に発刊して いるメルマガ「パレスチナ最新情報」を読むだけでも随分と参考に なると、私は何度もこのメルマガで紹介してきた。  念のためその連絡先をもう一度以下にお知らせする。  jsr@ksn.biglobe.ne.jp  2月15日に送られてきた「パレスチナ最新情報」の中にフォト ジャーナリストの小田切拓(おだぎりひろむ)という人のイスラエル 入植地最新ルポが掲載されていた。  これがパレスチナ問題の現実である。  世の中にはあまりにも多くの不条理が存在する。  それら不条理はその犠牲になっている当事者たちにとっては いずれも最も耐え難い不条理であろう。  その中でも一番の不条理は何かと問われたら、私はためらいなく イスラエルがパレスチナに対して日々行なっている不条理である と答えるだろう。  ここまでの不条理を、こまで的確に、そして悲しいまでの穏やか さで糾弾できる文章を私は見た事がない。  パレスチナ問題をまったく知らない人でも、その土地も何も知ら ない人でも、かくも残酷なイスラエルの不条理を肌で感じさせて くれるルポだ。  これを読んで、ここまでイスラエルと言う国に激しい怒りを覚え ざるを得ない自分がつらい。  少しながくなるが全文を引用する。  興味のない方は無視していただいて結構です。  だからこれはメルマガの号外とさせていただきました。 以下引用  ダビデの星――ヘブロンの入植地で『満蒙開拓団』を想起する  小田切 拓 ヘブロンの街には、「ダビデの星」が溢れていた。ナチの時代 とは違い、いや正反対で、ヘブロンでのダビデの星は、ユダヤ人 の優位を誇示するものである。 パレスチナ問題に関わっていれば、ヘブロンの惨状は必ず耳に入 っているだろうし、多くの人が訪れてもいるだろうが、殆ど取材 せずにきた。必ず扱わねばならないと思いながら、どうしても問題 がイスラエル内部に偏ってしまうこと、何より手を広げる余裕が ないので諦めてきたが、今回は、「入植者が、イスラエルそのもの を滅ぼし始めかねない域に入った」という仮説の下、ヘブロン付近 を中心に回った。 方法は誰にでもできる、誰もが行う方法で。 ・入植地の家庭を訪ね、ただ、人々と時間を共にする。そこで紹介 された 家庭をまた訪ねる。 ・入植地に隣接する、べドウィン(アラブ遊牧民)の集落を訪ねる。 ・Breaking The Silence主催のヘブロンツアーに参加。 (Breaking The Silence=イスラエル軍の非人道的行為を批判する 元兵士のグループ。 この元兵士たちは主にヘブロン近郊に配属 されていた。) 既に、ベツレヘムからヘブロンにかけての入植地は、エルサレムの <郊外>化している。バイパス道路と言われるユダヤ人専用道路の 整備が進み、パレスチナ側も落ち着いているため、車で僅か15分 ほどでエルサレムに行けるからである。これに、イスラエル内部で 広がる貧富の格差が拍車をかけた。 エルサレムでは、一般人の収入では充分なサイズの家を借りるのは 困難を極めるため、「<ちょっとした郊外>に越すだけ」、という ような人口が増え、全く罪悪感を持っていない。ユダヤ教に関係の 深い土地を我がものにする、というつもりもない。更に、(これは イスラエル内部でも正確な情報は公表されていないが)、様々な 優遇措置が取られ、援助も手にできるため、信じられないような 環境で生活できる。 一応、国家の承認なしでは、周囲に家を新築するのは勿論、既存 住宅の増築も禁止されているが、そんなものは守るものはない。 ある若い夫婦は、プレハブを使って託児所を始めていた。勿論、 勝手に自宅周囲の土地にそれを建て、ヤギや鶏、ロバを放し飼いにし、 「子供を、自然に親しませてやれる」と喜んでいた。子供 を預かっている忙しい時間なのに、託児所を切り盛りしている妻が、 手際よく用意してくれた朝食を断れなかった。 その他、自宅を大幅に改築してワイナリーにした一家からは、 赤ワインをご馳走になった。ゲストハウスを始めるために、庭に コテージを建てたりする家族も。乗馬クラブも営んでいて、繁盛 しているという。明らかに、度を越しているが、悪意は感じられ ない。なにせ国がこうした政策を推し進め、<違法>といっても、 個人レベルの入植地の拡大には、概ね目をつむっている。目を つむるどころか、警察はこうした行為を取り締まらず、軍も、 入植者がその中枢部に入り込んでしまっている。 入植者からの紹介で、他の政治色の強い入植地に行ってみた。そこ ではまず、入口の検問所にいた兵士に中に入るのを拒まれた。 ユダヤ人の知人と一緒にいたのだが、住民たちに、「ユダヤ人以外 は中に入れるな」と、言われているという。上司に問い合わせて、 結局入れたが、まさに、「独立国」のようであった。その、入植地 が多数存在する一帯には、<自然保護地>があった。高低差が 大きく、中東では珍しい林が広がる一体には、湧き水が流れる場所 もあり、<Nature Reserve>にはもってこいに映るが、小山の麓には、パレスチナ人 の村がある。彼らも、<Nature>の一つになってしまったかの ようである。 Outpostと呼ばれる、イスラエル政府が認めていない入植地にも 行ってきた。大抵は、入植地の周囲のエリアに、プレハブや、手製 の小屋、バスなどを運んでユダヤ人が住み始めた場所である。 そこまでは、舗装された道路が通り、電気・電話、水、ゴミ収集車 までくるという。公園や、幼稚園もあり、そこにはイスラエル政府 関係施設であることを示す看板。軍の監視塔も。確かに多少不便で はあるが、何せ、土地代がかからない。近年、イスラエル政府が、 こうした<違法>入植地の撤去をすることがあるため、不安定で あるとはいうものの、「元々ユダヤ人の土地であったわけだし、 パレスチナ人もいない場所だから、使わせてもらっているんだ」と いうのが、良心的な方の住民の声。掘っ立て小屋を知人に借りて 住んでいるというアーティストのカップルに出会って、男性の方が 住んでいるというその小屋の前に置かれたソファでビールをご馳走 された。目の前には渓谷が広がり、遠くに死海も目に入る。女性の 方は、エチオピア系でエルサレム在住。この二人は、<無知>という 印象そのものだった。 <満洲以上>であると言って良いのではないか。そこで人々は、悠々 自適に暮らし、汗を流しながら、家を増改築したり、家の前の道を 整備したりはしている。少しお金をかければ、パレスチナ人に依頼 して、本格的な工事を行う。その上、Outpostまで。物理的に考えて も入植地の違法性に基づき撤去にこだわると議論が進まないという ことで、Outpostに問題を集約しようという国際社会の<スタン ダード>は、内容的には、関係者にはよく知られていることだ。 <大悪>は許されて、<小悪>は許さない、というか、 <大悪>には触れにくいので、 <小悪>を見せ玉にして、<大悪>は維持するというか・・・ 哀しいかな、「Breaking The Silence」のツアーでも、この色合い は強く感じた。勿論、イスラエル軍の実態を暴く行為を広く知らしめ、 イスラエル内で議論喚起を促すため、街の中心部が、そっくり入植地 になってしまったようなヘブロンに、イスラエル人や外国人を連れて いく活動は評価されてしかるべきものではある、その点においては。 しかし、彼らは、<より良い軍>をまず標榜しているわけであり、 その後の部分は不透明である。例えばベツレヘム北部で、入植地ギロ を通った時、案内人はこう語った。「第二次インティファーダの頃は、 ベツレヘムから銃弾が浴びせられたので、(ギロの周りに)フェンス (隔離壁)が作られたんです。」ギロは、占領地の中にある。だから 入植地であるわけだ。占領地の中に住む入植者、そして、日常的に パレスチナ人の生活を脅かす入植地を守る軍の行為を正統と捉えな ければ、こんな発言はできない。確かに、身内(ユダヤ系イスラエル人) からは鼻つまみものになっているのかもしれない。望んでいるキャリア も、諦めたのかもしれない。イスラエル人が、イスラエル人に訴える としたならば、大いに評価できる部分があろう。またソースとしては、 我々にとっても有り難い。 だが、それを全面的に受け入れれば、Outpostの撤去を<平和に向け た努力>とするロジックと同じこと。「イスラエル政府の唱える、 理想通りの軍」であれば、軍事占領が継続されても、良いのか? <世界>で高い評価を受けているようなら、それは素晴らしい活動で、 彼らは<英雄>であるのか? 我々は、満州から引き上げる時、どれだけの人々を失い、また、 それ以前に、現地の人々にどれほどの負担を強いてきたのか、よく 知っているではないか。 べドウィンのこと、その他とても書ききれないが、一つだけ。彼らの 中には、今も、占領地とイスラエルの境界線を徒歩で超えようとする 者がいるらしい。元々土地に縛られていなかった彼らは、占領地内、 イスラエル内部だけでなく、ヨルダン、シナイ半島などに、親戚が いるのは普通のことである。こうした、近代国家に収まらない人々の 問題や、文化論をここで語るつもりはないが、金と、軍事力を背景に、 周囲から<孤立>し、イスラエル人マジョリティからも切り離され ていく入植者と比べたとき、どうにも整理しようのない心境になった。 かつては、パレスチナでも有数の大都市として大いに賑わい、カイロ の有名なマーケット・ハンハリーリーもヘブロン商人が始めたと言わ れるような長い歴史を持つ商業の街ヘブロン・・・アラブ名=ハリール。 その町の,今は兵士ばかりが目に付く中心部の、ユダヤ人しか自由に 移動できない数キロ四方の土地、一般人が殆どいない道路で、銃を 持った入植者の若者が<自主パトロール>をしている。スポーツウエア を着て、あっという間に行き止まる端から端までを、何ども何ども ダッシュして、トレーニングをしているつもりのようだった。 そこに、「ダビデの星」。パレスチナ人の扉に、市場の跡に・・・ 「ApartheidSt. Arabs are prohibited」というボードが掲げて あったり・・・ ナチが強要した、ユダヤ人であることを示すバッヂと、ヘブロンの それと、立場が逆なだけ、裏と表のようであっても、両者は一つで あるような気がしてならなかった。なぜ、そこまで蔑み、そこまで 誇らねばならないのか? 思い起こして欲しい。背後にあるのは、「金」と「軍事力」。行く ところまで行ってしまったようだ。 (おだぎり・ひろむ フォト・ジャーナリスト)                         引用終わり ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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