□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年11月24日第826号 ■ ============================================================= ロシアの核燃料再処理提案を握りつぶした経済産業省 ============================================================ 11月24日の毎日新聞は一面トップで大スキャンダルをスクープ を報道した。 脱原発者たちはこのスクープを千載一遇のチャンスととらえ、脱原発 派の国会議員を動かして脱原発の気運を再び盛り上がらせるべきだ。 脱原発派の国会議員は官僚たちのこのような重大な誤りを厳しく追及 し、政治主導の原子力行政の実現を野田民主党政権に迫るべきだ。 そのスクープとは次のようなものだ。 すなわちロシアは2002年の時点で日本に対し重要な提案をして いた。 日本が処理に困っている原発の使用済み核燃料をロシアで一時的に 貯蔵(中間貯蔵)し、燃料として再利用(再処理)することを提案して いた。 ところがこの提案が青森県の六ヶ所村再処理工場の稼動の妨げになる という理由で経済産業省によって握りつぶされたというのだ。 これは原発政策に対する重大な背信行為であり、握り潰した官僚たち の責任は厳しく追及されなければいけない。 毎日新聞の調べによれば次の事がわかっている。 すなわちロシアの提案は02年10月25日付の尾身幸次・科学技術 政策担当相宛にロシアのルミャンツエフ原子力相から発せられた。 それを受領した在ロシア日本大使館が日本語訳をつけ内閣府原子力 政策担当室幹部らに渡した。 日本大使館はさらにエネルギー庁の一部幹部にもファックスで送った。 ところがこの提案は経済産業相の諮問機関である「総合資源エネルギー 調査会」や原子力委員会の「新計画策定会議」に知らされることは なかった。 それどころか経済産業省のトップ(事務次官)にも知らされなかった。 すなわち、在ロシア大使館に届いた外交文書(書簡)は内閣府の原子力 委員会に渡り、その後エネルギー庁へ渡って一部幹部だけにとどめられた というわけだ。 このような重要な外交文書が、このようにいい加減な形で処理され、 なによりもその文書の存在さえ今では不明であるという。 俄かには信じられない杜撰さだが、問題はこのような重要な外交文書が なぜそのようにいい加減に扱われたかという事だ。 その背景には外務省と経済産業省の外交一元化に関する熾烈な権限争い があったに違いない。 尾身幸次は経済産業省の前身である通産官僚出身の政治家だ。 私も何度か大使館で接した事があるが外務省には高圧的だ。 経済産業省は尾身大臣あてのルミヤンツエフ原子力相の書簡を外交 文書と見なさず尾身大臣宛の書簡として処理しようとしたに違いない。 日本大使館に翻訳だけさせて、それを内閣府の尾身担当大臣室に直接 伝えるように外務省に指示したに違いない。 外務省も外務省だ。 本来はこのような重大な書簡は外交文書として大使館経由で外務省に 公電や公信で送り、総理大臣に供覧することを主張すべきだ。 しかし尾身大臣の命令には逆らえずその指示に従った。そしてその写し を資源エネルギー庁へファックスした。 ただでさえ経産省との権限争いに負けている外務省だ。 おまけに原子力行政は経産省の専権だ。 このような機密度の高い外交文書をファックスで送付することなど 外交文書ではあってはならない事だが、これは外務省の責任ではないと いわんばかりに経産省に丸投げしたということだ。 この毎日のスクープ記事を逆手にとって野田民主党政権は原子力行政 の主導権を経済産業省から引き離して政治主導にすべきところだが、 官僚主導の野田首相にはとてもその気概はないだろう。 この毎日のスクープ記事を契機に外務省は経済産業省から原子力外交 の主導権を取り戻すべきだが、いまの外務省にはとてもその元気はない だろう。 面倒な原子力外交は経産省にまかせていおけばいい、とてもそこまで 手がまわらない、対米従属外交だけで精一杯ということだろう。 こうして官僚主導の無責任な行政や外交が繰り返されていくのである。 それを咎めるものがいないまま放置されていく。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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