□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年11月23日第823号 ■ ============================================================= 深刻な政治の機能不全 ============================================================ 深刻な政治の機能不全。 これは日本の政治の現状を憂いている言葉ではない。 財政赤字削減に関する米国の超党派協議が決裂した。 それを評した11月23日の毎日新聞社説の見出しの言葉である。 財政赤字問題で米国政治がのた打ち回っている。 11月23日の各紙が報道する米国の財政破綻とそれをめぐる米国の 政治の対立を見てあらためて思い知らされる。今の米国の政治は確かに 機能不全だと。 なにしろ税制改革について民主党と共和党がその思想において根本的 に異なるのだ。 すなわち財政赤字削減を富裕層への増税と歳出削減の組み合わせで 行なおうとする民主党に対し、共和党は増税反対と社会保障給付で削減 しろという。 この溝が埋まらないという。 政府の関与を徹底的に嫌い、その政府にはもうビタ一文わたさない。 政府は何もするな。その結果弱者が切り捨てられても仕方がない。それ は自己責任だ。 わかりやすく言えばこれが共和党の言う本当の「小さな政府」論で ある。 その一方でオバマ民主党政権は富裕層への増税を行なってまでも医療 改革、社会保障給付を行なおうとする。 その限りにおいて、わが国の社会主義者にとってはオバマ政権の方が 好ましいように思える。 しかしそのオバマ民主党政権もまた、赤字の半分を占める国防・安全 保障費の削減には反対し、「米国が張子の虎になれば他国による『敵対 的行動を誘発する』」(パネッタ国防長官)と警告をする。 共和党への譲歩より、来年の大統領選挙に有利だという判断で、 オバマ大統領は共和党との対決姿勢を強めているという。 歴代の民主党政権は労組を背景に日本たたきを繰り返した。そんな 民主党政権よりも日本政府は共和党政権のほうが好ましいと考えてきた。 これを要するに、米国は民主党政権であれ共和党政権であれ、米国の 問題を解決できず、日本のことなど考える余裕はないのだ。 その米国では、政治や政治家に対する信頼度が低下し、国民の反政府 運動がオバマ政権を悩ましているのだ。 そんな米国の深刻さを知ってか知らずか、日本の政治は、民主党で あれ自民党であれ、日米同盟の深化こそ日本の国益だと叫び続けている。 米国はもはや普天間問題どころではないのに、野田政権は普天間問題 の合意を順守し、強行しようとしている。 米国のエゴで言い出したTPP交渉など、参加9カ国の間の交渉でさえ うまく行くはずはないのに、日本政府は乗り遅れるなと急いで参加表明を する始末だ。 世界の国民がIMF主導の構造改革では問題が解決できないと疑問を 呈している中で、野田首相は増税、緊縮財政路線にひた走る。 そんな野田民主党政権の暴走を、誰も、どの政治家も、止められそう もない。 緊張すべきはずの日本の政治が、ここにきて奇妙に停滞している。 「深刻な政治の機能不全」、はそのまま日本の政治にもあてはまる のである。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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