□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年11月1日第767号 ■ ============================================================= 最後にもう一度だけTPPについて書く ============================================================= 11月はAPEC首脳会議に向けてTPP一色の報道となるだろう。 もはや議論はつくされている。そして問題の論点も明らかにされて いる。 これは経済問題ではない。政治問題なのだ。しかも対米従属関係を 是とするかどうかの外交問題そのものなのだ。 普天間問題と同じだ。 日米同盟深化の問題なのだ。 11月のAPEC総会までに野田首相がTPP交渉参加を急いで決 める理由はまさしくそこにある。 その事についてもう一度だけ書いてTPPについて書くことを終わり にしたい。 発売中の週刊エコノミスト11月8日号に岩田太郎という在米ジャー ナリストが書いている。 すなわち米コロンビア大学で「貿易の神様」の異名をとるジャグディー シュ・バグワティー氏が9月29日に論文を発表して、米オバマ政権は TPPではなくWTO(世界貿易機関)のドーハ・ラウンド妥結に努力 すべきだと促したという。 ドーハ・ラウンドが失敗すれば結果的にTPPなどの排他的な枠組み しか残らなくなるので、世界の指導者たちがオバマ政権に、ドーハ・ ラウンドへ米国は立ち戻るように説得すべきだと説いたのだ。 TPPに関する経済問題のすべてがここにある。 米国はWTOを見限って自分の都合のいい保護主義に舵を切ったのだ。 無差別貿易自由化を国是としてGATTやWTOを重視してきた日本は 本来ならばそんな米国を批判すべきなのだ。今の日本は貿易自由化の国是 を捨てて保護主義の流れに加担しようとしているのだ。 恥ずべき対米従属である。 その同じエコノミストの「東奔政走」という政治コラムの中で、小松浩 毎日新聞論説委員が次のように書いている。 「・・・もともとTPP参加は菅前首相が言い出したものだが、その後、 菅政権が中国、韓国との自由貿易協定(FTA)に傾斜する姿勢を見せる と米国は嫌悪感をあらわにした・・・」 まさしくTPPは伝統的な米国の利己的アジア政策の産物である。 マハティール大統領が1991年に唱えた東アジア経済共同体構想 以来一貫して続く、米国の対日不信政策である。 つまりアジア諸国が団結するところまでは許す。しかしその団結は 米国が中心とならなければいけない。 ましてや日本が米国を差し置いて中国、韓国と一緒になってアジア の地域経済の繁栄に手を貸してはいけないのだ。 日本はあくまでも米国の利益に従順に従う国でなくてはならない。 これである。 今度のTPP問題は昔から変わらない米国の一貫した対日政策のに ほかならない。 かつての日本ならまだ国益を考える余裕はあった。 いまの野田政権はなんの気概も抵抗力も無い。 ただひたすらに米国の命令に従うだけの日本になったという事である。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)