□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年5月27日発行 第365号 ■ =============================================================== 東電の現場所長の独断から見えてきたもの =============================================================== 今度の福島原発事故ほど情報がめまぐるしく変わった例は過去 にないだろう。おそらくこの先もないに違いない。 そのきわめつけは現場所長の判断で注水中断をしていなかった という5月26日の突然の発表である。 これについては今後様々なところで様々な事が指摘されるに違い ないが、私の視点を順不同で列挙しておきたい。 一つは吉田という所長の独断の判断をどう評価するかである。 危機を回避した「正しい判断だ」と評価する向きもあるが、私は 吉田という人は東電の職員としては正しくない職員だと思っている。 技術者の良心として、本店の中断指示が間違いで危険だと吉田 所長が判断したのなら、それを本店に伝えたうえで首を覚悟で注入 し続けたの なら立派だ。 しかし、それを本店に隠して行ない、しかもIAEAの査察で聞か れたから、もはや隠し通せないと観念して白状した。そう報じられて いる。それが事実なら、やはり正しくない。 二つ目は、たとえ注水が中断されていなかったとしても、これまで 議論されてきた菅首相の中断指示の有無とその責任問題は、この所長 の独断事件とは無関係に存続し続けるということだ。 明確な中断指示の発言があったかどうかは大した話ではない。たと え菅首相が弁解するように明確な指示を行なっていなかったとしても、 それらしき発言を周辺に漏らし、それが雰囲気として東電幹部に伝わっ て中断しようとなったのであれば、それはやはり菅首相の指示なのだ。 首相の言動はそれだけ影響力があるということだ。 だから菅首相の判断が正しかったかどうかはやはり検証されなけれ ばならない。 その意味で原田所長の独断の注水継続は、菅首相の雰囲気を先読み して中断しようとした東電幹部に対する痛烈な批判であり、菅首相の 判断に対する抗議の謀反でもあるということだ。 最後に私が注目したのは記者会見における武藤東電副社長の言葉だ。 本店の指示に反して独断で注水継続をした吉田所長を処分すること 組織として当然としても、その判断は正しかったと副社長は弁護した。 これは菅首相に対する東電の痛烈な批判である。 東電は菅首相と官邸に対し決定的な不信と不満を抱いているという ことがこれで証明された。 そして東電がここまで菅首相に対して強気になれるのも、それが米倉 経団連会長以下財界の総意であるからに違いない。 これでは原発事故処理は適切に行なわれるはずはない。 今後も菅首相と東電、財界と菅首相の間では原発政策についての迷走 が続くだろう。 それは国民にとっても不幸なことである。 了
新しいコメントを追加