□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年5月20日発行 第350号 ■ =============================================================== 民主党が原子力協定の国会承認を見送った本当の理由 =============================================================== 読者にとってはほとんど関心がないテーマであるかもしれない が、新聞記事を正しく読む必要性があるという一例を書いておき たい。 民主党は5月18日午前に開かれた外務部門会議で、ベトナム、 韓国とそれぞれ署名済みの原子力協定について、今国会での承認 を見送る方針を決めたという。 このニュースは一段のベタ記事で各紙が報じていたので読者は 何気なく読み過ごしてしまいがちだが、よく読み比べると真実が 見えてくる。 たとえばそれを報じる5月19日の読売新聞の記事によれば、 国会承認を見送った理由は、福島原発事故の検証が必要であると 民主党内に意見が出て見送られた、となっている。 これを読む限りでは民主党内に原子力政策の見直し論が出て、 一旦署名した条約の承認に慎重になった、ということになる。 それが事実なら大きな方向転換だ。相手国のある国際条約を日本 側の都合だけで批准しないというのは外交的には異例なことである。 そう思っていたら、同じ一段のベタ記事でも5月19日の毎日新聞 はこう書いていた。 ・・・韓国、ベトナムとの原子力協定について、党内や相手国内に 異論が強いことから慎重に対応する方針を決めた・・・一方、ヨルダ ン、ロシアとの原子力協定は、今国会中に承認を目指す方針を決めた 何のことはない。韓国、ベトナムとの原子力協定を見送ったのは 韓国、ベトナムが延期を要請したからだ。その一方でヨルダンやロシ アとの原子力協定はそのまま承認するという。決して民主党が原子力 政策を見直そうとして条約の承認を延期したわけではないのだ。 それをダメ押しするかのように5月20日の日経新聞は、やはり これも一段のベタ記事であるが、こう書いている。 民主党は26日からはじまるサミットの前に、各国との原子力 協定の締結を促す意見書を外務省に提出する。同協定は原発輸出の 前提となるもので、引き続き経済外交の一環として原発輸出を目指 すよう求める狙いだ。 なんと民主党は、福島原発事故の検証など関係なく原発を売り込む 方針は変えるなと言っているのである。 読み落としそうな一段のベタ記事でも、ちょっと考えて読むとこれ だけの事がわかるのである。 了
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