□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年5月20日発行 第349号 ■ =============================================================== サミットで菅首相が面目を失うのは原発問題だけではない =============================================================== いくら西岡参院議長や自民党や反菅勢力が菅首相をサミット前に 引き摺り下ろそうとしても無理である。菅首相が辞めないからだ。 しかしいくら菅首相がサミットに出かけても、菅首相はサミット で面目を失うに違いない。そしてそれは取りも直さず日本が面目を失 うことでもある。 私は4月28日のメルマガ第306号で、菅首相はサミット前に辞 めたほうがいい。新しい首相が原発事故の反省と新しい原発政策を掲 げてサミットに参加したほうが日本にとって好ましい、と書いた。 それは決して菅おろしの観点から言っているのではない。日本の為だ。 考えてみるがいい。原発事故を起こし世界に大きな迷惑を与えた国の 首相が、なおその原発事故の収束に有効な手を打てないままサミットに 出席して、いくら原発事故の安全対策や脱エネルギー政策を語ってみて も、白々しいだけだ。日本国民はだませても世界の首脳はだませない。 今度のサミットでは菅首相に出番はないのだ。 そして出番がないのはなにも原発問題だけではない。こんどのサミット のもう一つの大きなテーマは中東民主化である。 それを見事に解説したのが5月16日の東京新聞のニュースがわかる A toZ 「G-8 ドービルサミット」という特集記事である。 そもそも今度のサミットで世界が重視してきた政治問題は中東問題で あった。原発問題は日本の原発事故がもたらした歓迎されざる議題でしか なかったのだ。 他国に先駆けてリビアに軍事介入した議長国のサルコジ大統領は中東 民主化に指導力を発揮したいと考えている。仏外交筋によるとチュニジア とエジプトの代表がサミットに招待されるという。 その一方で米国も中東紛争を米国やイスラエルに有利に運ぶため、中東 民主化後の各国が反米、反イスラエル政権にならないよう必死になってい る。19日にはわざわざ中東民主化を支援すると演説を行なったほどだ。 ロシアや中国はリビアに対する軍事介入に慎重な態度を崩さない。欧米 主導の中東支配を許さないといわんばかりだ。 かくして中東民主化については各国の思惑が錯綜しながら激しい議論が 首脳間で行なわれることになる。 そんな中で中東問題になんの知見もない菅首相は、外務官僚の書いた 対米追従の中東政策を読み上げるだけだ。 そう思っていたら5月19日の各紙が報じていた。菅首相は「デモクラ シー尊重」の観点から北アフリカへの民主化支援を表明するという。 中東民主化で各国がしのぎを削る中で、米国に追従して金をバラまく時 だけ発言する。そのピント外れぶりが目に浮かぶようだ。 了
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