□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年5月19日発行 第347号 ■ =============================================================== 菅政権と東電の本当の力関係 =============================================================== 原発事故が起きてから今日までの菅政権と東電(電力会社)との 関係を見ていると、仲が良いのか悪いのか、どっちが強いのか弱い のか、よくわからない、と思うのは私一人ではないはずだ。 実はこの中途半端な両者の関係こそ原発事故をここまで悪化させ た最大の原因であると思う。 よくも悪くも自民党政権下であれば両者は一心同体だ。原発政策 を維持するにせよ、あるいは世論に勝てないと判断して脱原発方針 にカジを切るにせよ、もっとはやく結論を出していただろう。 もし菅政権が本当の意味でドイツのような環境重視の政権であれ ば、とうの昔に東電や電力業界に抜本的な改革を迫っていたことだ ろう。 菅民主党政権はそのどちらでもない。 その理由はもちろん民主党という政党が、安全保障政策と同様に 党としての明確な方針がないからだ。党の一体性がないからだ。 しかし、もう一つの大きな理由がある。 それは菅政権が保身のために東電と結託して情報隠しに奔走した という同罪の誼(よしみ)があるからだ。この同罪の誼のゆえに、 嫌いあっても庇いあわなければならないのだ。 そのことを5月19日の東京新聞が一面で伝えている。 3月15日午前6時10分、福島第一原発2号機で第三の爆発が 起きた時、第一原発の正門付近の放射線量は「べらぼうな数値」 (福島県原子力安全対策課)だったという。だが枝野官房長官は午前 の記者会見で「(爆発音の)前後で周辺の数値(放射線量)に大きな 変化はない」と話し、影響を小さく見せた。 東電はそれを知っている。東電だけを悪者にして自分だけ逃げ切 ろうとするのならいざとなれば開き直るぞという東電は決めているに 違いない。 それに東電には、原発は国策だったじゃないか、という言い分が ある。それは民主党政権になっても変わらなかった。そうである以上 国にも責任がある。菅政権にも責任がある。 それなのに東電だけを悪者にして会社の存続や職員の処遇を切り捨て るのなら日本の産業界が許さないだろう、という思いが東電にはある のだ。 そして菅首相自身も、日本の首相に居座り続けたいのなら日本経済を 崩壊させるようなまねは出来ないというジレンマがある。 かくして菅民主党政権と東電の関係がいつまでたってもスッキリし ない。 もはや菅首相と東電は決して良好な関係にはなれないが、かといって お互いに喧嘩別れすることもできない。 これは最悪だ。 菅首相と電力会社がこのような関係である限り、今後どのような政策 を打ち出そうともうまく行かないだろう。原発問題は菅民主党政権では 解決できない。 もし菅首相がこのまま長く政権にとどまることに固執するならば電力 行政が行き詰まる。日本の経済や国民生活が立ち行かなくなる。そう いう気がする。 了
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