□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年5月15日発行 第338号 ■ =============================================================== 菅首相の脱原発が本物かどうかはサミットの菅首相発言でわかる =============================================================== 5月16日付日刊ゲンダイに次のように記事があった。すなわち 日中韓サミットがもうすぐ(5月21日、22日)東京で開かれる というのに、具体的な方針が何も決まっていないので各国代表が怒 っているというのだ。 この記事を読んだとき、私は即座に5月26日、27日にフラン スで開かれる本物のサミット、つまり8カ国首脳会議のことを思い 浮かべた。 このサミットについての基本方針が直前になってもまったく報道 されていない。 こんなことは今までのサミット報道では考えられないことであっ た。これまでは外務官僚がシェルパ(先導人)として議題を設定し て方針を決め、それが事前に必ず報道されてきた。 ところが今回はまったくその報道が見られない。 そう思っていたら5月15日の読売新聞が書いた。 政府はサミットで菅首相が表明する「日本の原子力・エネルギー 政策に関する将来構想」なるものの骨格を固めたと。 ところが、驚いたことにその構想は矛盾した内容が同居している。 すなわち一方においてエネルギー基本計画を見直して再生可能エ ネルギー開発を進めるとする一方で、原発を継続するという。 米、仏と連携し、過度な「脱原発」の流れとは一線を画す立場を 鮮明にするという。 どっちが本当なのか。菅首相の本当の顔なのか。 この事を解説してくれているのが5月15日の日経新聞「けいざ い解読」である。 そこには次のような解説が書かれている。 菅首相が浜岡原発の操業停止を要請した直後から、米欧から日本 の各省庁に対し、「日本政府は原子力政策を転換したのか」、 「菅政権は脱原発にカジを切るのか」、と質問が殺到したという。 特に「原発サミット」を盛り上げようとしていた議長役のサルコ ジ大統領はシナリオが崩れることを恐れ、オバマ大統領も「単純に 脱原発というわけにはいかない」と同調し、菅政権への不信を高め ている。キャメロン英政権もサミットで原発の必要性を確認したい 米仏に歩調を合わせ始めた。世論に押されたメルメル独首相だけが 脱原発に踏み切った、と。 対米従属の菅首相は慌てたに違いない。 緑の革命を掲げるドイツと一緒になって英米仏と対峙するつもり は菅首相には毛頭ないのだろう。だから浜岡原発停止発言の直後か ら原発継続を早々と決めたのだ。 その一方で浜岡原発停止を歓迎した国民を裏切ってはパフォーマ ンスの意味はなくなる。 そこでもっぱら再生可能エネルギーの利用拡大について指導力発揮を 狙おうとするのだ。 しかし国際会議での発言は、原発政策での曖昧な態度は通用しない。 日本国民をごまかせても各国首脳はごまかせない。 おまけに原発推進国がもっとも危機感を抱いている福島原発事故の 収束は一向に見えてこない。 各国は菅首相のサミットでの発言を注視するに違いない。いまや菅 首相は今度のサミットの負の主役である。 果たして菅首相がサミットでどのような発言をするのか。政治家菅 直人の評価がそこで定まることになる。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)