緊急提言ーもう一つの日本をつくる が日刊ゲンダイに掲載される ことになったと読者の皆様へお伝えしてから一週間以上がたちました がいまだ日刊ゲンダイには掲載されていません。 読者の皆様におかれてはいぶかしく思われたと思いますが、その事に ついてこの間の経緯をお伝えして皆様へのお詫びと了解を求めたいと 思います。 結論から言えば、来週火曜日(5月17日発刊、日付けは5月18日) の日刊ゲンダイに掲載予定であるという事を編集長から先ほど確認しま した。もっともこれとても大きなニュースが起これば変更ありうべしと いうことでした。 本来ならば連休明けの9日にも掲載するという返事をもらって、この 事を読者の皆様にお伝えしたのですが、結局一週間遅れたわけです。 その間私は編集長と何度もやり取りをし、日刊ゲンダイ側からはとに かく緊急提言は短くしてほしいということで、私は最終的に3000字 ほどに書き直して日刊ゲンダイに送付していました。 その原稿はこのメルマガ読者の参考のために末尾に貼付させていただ きます。念のため日刊ゲンダイに掲載されるまで、外に転載しないよう に皆様の理解と協力をお願いします。 掲載が遅れた理由は、ニュースを優先する以上、企画ものは後回しに せざるを得ないという日刊紙にとっては当然の判断があります。 たしかに大きなニュースは次々と起こりました。 その一方で私が緊急提言で書いたことのいくつかがつぎつぎと報道の 中で現実化していきつつあります。 たとえば今日(5月15日)の読売新聞では、自民党の小野寺五典議員 が「権限」と「お金」被災地に渡すほうが政府の復興策を待つよりもま しだと言い出しています。 5月14日の読売新聞は、沖縄の振興策については政府ではなく沖縄 県民が策定する仕組みに変更すると政府が方向転換したと報じられて います。 もはや私の緊急提言はタイミングを逸する。 そう思って日刊ゲンダイの編集長に頼み込んだところ5月17日に 掲載予定であるとの約束を得たという次第です。 その間私と編集長の間で様々なやり取りが繰り返されましたが、私の 如き一般人の意見でも日刊ゲンダイに掲載してくれる、その日刊ゲン ダイに感謝しつつ、ここに読者の皆様にはあたらしい掲載日付をお知ら せし、あわせ了解をいただければ幸甚です。 以下引用はじめ 緊急提言! 我々の手で「もう一つの日本」をつくるしかない 1.国民を救えないこの国の支配者たち 今度の大震災で明白になった事は、この国の支配者たちでは被災者 を救えないことだ。しかしこの国の支配者たちが救えないのは被災者 だけではない。沖縄県民は見捨てられたままだ。そして多くの弱い 立場におかれた一般国民もまた切り捨てられてきた。 実はこの国は、今度の東日本大震災や原発事故が起きる前に既に 行き詰まっていた。支配者たちの失政と無駄遣いで招いた膨大な財政 赤字に苦しみ、それを解決するという口実で導入された競争至上主義 の結果、格差社会が進み、若者や女性、高齢者、低所得者、身体障害 者などの弱い立場の国民が犠牲を強いられる国になってしまった。 しかも、こともあろうに支配者たちは、大震災の復興を口実にして 再び自分たちの手で増税し、日本を都合よくつくり変えようとしてい る。 今こそ日本を愛する良識ある国民は、これら弱者に自らを重ね合わ せ声を上げなければならない。 2.支配者とは権力構造の中でいい目を見てきたすべての連中である。 私が言う「支配者」とは戦後一貫してこの国を支配してきた自民党の 政治家と官僚たちだ。しかし政権交代を果たした民主党政権が、権力 を手にしたとたん、今まさに保身のために国民を裏切り自民党以上に 権力を私物化している。 そんな政治家たちに面従腹背する官僚たちも、メディアで無責任な 論評を繰り返す識者や評論家も、利潤追求に奔走するこの国の大企業 も、みな支配者なのだ。そして、なによりもそのような日本の支配者 たちともたれ合い、権力監視というジャーナリズム精神を忘れたこの 国の大手メディアこそ許しがたい支配者なのである。 彼らが我々の収めた税金と国家権力をほしいままにしこの国を行き 詰まらせた。しかし、日本という国は彼らだけのものではない。 大震災復興の復興計画という大事業を彼らに独占させ、彼らの支配を 永久化させてはいけない。未曾有の大災害を活かし、この日本の権力 構造をかえて正しい日本を取り返す。それを成し遂げることこそせめ てもの犠牲者に報いる事である。 3.原発事故があぶりだしたこの国の支配体制の病理 今度の大震災は図らずも原発推進という国策の裏に隠された権力犯罪 を白日の下にさらした。それは支配者たちが権力にまかせて利権を山 分けし、その悪業を隠すために情報を操作、隠蔽し、協力者を買収し、 歯向かう者をイジメ、弾圧する、警察、検察、司法までも歪める。 そういう卑劣な犯罪のことである。 権力犯罪は何も原発政策に限らない。およそこの国のあらゆる国策 は、一般国民のためではなく、支配者たちのために支配者たちの手で 作られ、そして支配者たちの巧みな宣伝によって、正しいものとされ て来た。その背後には日本を占領し、日本を利用し続けてきた米国の 存在がある。 この支配構造を変えることは至難の業だと我々はあきらめてきた。 そのあきらめは政権交代が起きても何も変わらなかったことで絶望的 になった。しかし今度の大震災と原発危機は、もはや一般国民も立ち 上がらなければどうにもならない状況に日本を追い込んだ。新しい主役 と新しいシステムを見つけないと日本の未来はない事を教えてくれた。 4.行動を起こす事とは、「もう一つの日本をつくる」事である もう議論はいい。権力批判を繰り返してもむなしい。「行動を 起こす」しかない。私が言う「行動を起こす」ということは、権力者 から権力を一気に奪い取ることではない。それは革命であり、民主国 家の日本では非現実的だ。国民の共感も得られない。 私の言う「行動を起こす」ということは、この国の支配者たちが独占 してきた権限と予算を、震災復興のために被災者たちにその一部を与え てみよと要求し、それを勝ち取る事である。 たとえ一部といえども権力者が予算と権限を一般国民の分け与える などということは平時ではありえない。しかし今は大震災という 未曾有の異常事態だ。おまけに原発事故という人災が被災民を塗炭の 苦しみに追い込んだ。被災民の怒りの前にはいかなる支配者もその 要求を拒むことはできない。被災者が自分たちの手で行なう復興計画が、 この国の支配者たちが行なう復興計画よりも迅速、効果的であるのなら 国民は気づく。もはや政府も国会議員も霞ヶ関の官僚も要らない、と。 そして被災者たちの復興に続けとばかり、全国の地方自治体が同様の動 きを見せるだろう。そうしてはじめて「もう一つの日本」がうねりを たてて拡がって行くのだ。 5.キーワードは脱原発、共生社会、世界都市である 原発事故の被害にあった住民が真っ先に進めるべきは脱原発エネルギ ーの町づくりである。生活に必要な電力需要をコミュニティーで安く、 安全に確保して住民に供給できる町づくりを、政府から予算を確保して 実現する、これである。 「脱原発エネルギーの町づくり」が成功すれば、その後の可能性は 無限に広がる。 「もう一つの日本」のコンセプトは、この国の支配体制が当然視して きた効率優先の競争社会、地位や名誉や待遇にこだわる生活、そういう 既存の価値観に押しつぶされない人生もまた主権を持つ社会である。 それは決して既存の価値観を否定するものではない。既存の生き方に 価値を見出し、競争社会に勝ち抜いて行くことの出来る恵まれた者たち はそういう生き方をすればいい。しかし、それが出来ない、したくない 者たちの生き方もまた等しく認められる社会をつくることである。 その根底にあるのはベーシックインカム制度(無条件の所得保障制度) の思想である。支配者たちがつくった年金制度や社会保障制度は既に 破綻している。その解決策を彼らは見つけられないままいたずらに年月 を費やしてきた。 それにかわってベーシックインカム制度を導入するのだ。面倒な手続 きや審査をなくし、すべての住民が当然の権利とし最低収入を手にする 制度を現実のものとするのだ。こうして最低限の生活が保障されれば、 さらなる収入を求めて仕事を探す余裕ができる。これである。 職については地方議会や地方公務員の職を住民の全員に開放すると いう考え方を導入する。つまりその地方政治の職を地方政治家や地方 公務員に独占させるのではなく、ローテーションを組んで住民が分かち 合い、その収入も分かち合うという考えである。これこそが地方議会 改革、地方公務員制度改革の究極の姿である。 漁業と農業をコミュニティー全体で立て直し、住民がその職を分かち 合う。今度の被害をきっかけに国民が国産の食糧を優先して買うように すれば地域の収入にもなる。 今度の大震災は世界中の注目と同情を集めた。特に原発事故について は、脱原発を目指す気運が世界的に高まった。脱原発を唱える世界の 影響力のある人たちに向かって、日本の被災地から脱原発の町づくりを しますと宣言し、それに協力して欲しいと呼びかけるのだ。そうして 世界の一流企業の誘致を行なう。利害を超えて協力する優良企業は必ず 現れる。それを誘致することは雇用創出になり、なによりもその地域を 世界的に魅力的なものとする。 6.後藤新平は要らない 関東大震災を復興させた後藤新平にちなんで「平成の後藤新平」の再来 を望む声がさかんに喧伝される。 それこそが支配者たちの発想である。 それを否定しよう。上からの命令で復興させてはいけない。平成の 大被害は我々の手で克服するのだ。被災者が立ちあがり、その声を政府 に届け、被災者を代表して政府と渡りあえる首長を見つけるのだ。 福島県の知事を5期務め、国会議員も経験した佐藤栄佐久氏は原発に 反対して国家権力から排除された人物である。今こそ佐藤氏は立ち上が るべきではないのか。 米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた南相馬 市の桜井勝延市長などもふさわしい一人である。日本政府の無策を世界 に訴えた反骨精神と国際的発想を持つ桜井市長は「もう一つの日本」 づくりの先頭に立つにふさわしい。 日本の政治を変えると言う意味で最も期待されるのは小沢一郎である。 彼が本物なら国会議員を捨てて岩手の一首長として中央政府に立ち向か うべきである。これ以上のドラマはない。 有力な著名人や経済人がこの動きに参加するようになれば「もう一つ の日本」づくりは大きなうねりとなるに違いない。たとえば脱原発に 目覚めたソフトバンクの孫正義社長、政権交代に尽力したがその民主党 政権に失望した稲盛和夫京セラ創業者、「原発に頼らない安心できる 社会の実現という考えを実践した吉原毅城南信用金庫理事長などは、 「もう一つの日本」づくりの協力者にふさわしい人物である。 7.エジプト市民にできて我々に出来ないことはない 日本の変革は、これまで権力の外に置かれてきた者たちの手で成し遂 げなければならない。鉄のように強固な支配体制にくさびを打ち込み、 それをきっかけに真の民主国家に生まれ変わる時だ。 それはあたかもエジプトで起きた市民革命の如きだ。あの時エジプト の市民は、「一人一人がこころから国を変えたいと思った。ここにいる 皆がヒーローだ」と語った。 エジプト市民が成し遂げたことを我々ができないはずはない。 引用終わり
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)