□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年5月14日発行 第336号 ■ =============================================================== 歴史に名を残した菅首相 =============================================================== 菅首相は5月13日の衆院予算委員会において浜岡原発停止 要請の政治決断を問われ、「評価は歴史の中で判断いただきたい」 と大見得を切ったらしい。 しかし原発問題とはまったく別のところで、すでに菅首相は 歴史に名を残す首相になってしまった。 5月14日の読売新聞はその一面で、「首相、来月訪米を断念」 という見出しの記事を掲げた。 すでにこれまでの報道で、菅首相の6月末までの訪米が困難に なりつつあることはさんざん書かれてきた。 しかし、ここまで明確に、しかも菅首相が訪米したくてたまら ないのに米国がそれを拒否していることを、断定的に書いた記事は これがはじめてだ。 しかも首相訪米の前提となる日米安全保障協議の外務・防衛閣僚 協議(2プラス2)の開催さえも米国は応じようとしない。 普天間問題の白紙撤回を米国議員が提言した今こそ、日米両政府 は安保協議を行なう必要性があるというのにである。 これは要するに米国は菅民主党政権を見放したということだ。 戦後66年の日米関係史を振り返ってみて、米国に見放されて なおかつ首相の座に居座ることのできた首相はいない。 米国の反発を買って首相の座を米国によって引きずりおろされた と噂される首相も多くいた。 だからこそ日本の首相はすべからく対米従属に走ったのだ。 米国に見放されたと自覚した時点でみずから身を引いたのだ。 しかし菅首相はそのいずれでもない。 米国から相手にされなくても首相にとどまり続けようとしている。 今度の原発事故の対応であきれ果て、もはや見放しているにもかか わらず米国はあえて菅首相をすげ替えようとはしない。 この二つの意味で菅首相は日本の歴史に残る首相になったのだ。 ここまで鈍感で強靭な首相は初めてだ。 かくなる上は、菅首相には残りの任期において日米同盟から自立し た平和国家を取り戻して欲しい。 沖縄を米軍基地から解放してほしい。 それではじめて歴史が評価する首相となる。 どう考えても菅首相にはそれが望めそうもないが、菅首相が歴史に 評価されるにはもはやこれしかない。 了
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天木直人(元外交官・作家)