□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年5月13日発行 第335号 ■ =============================================================== 何度でも言う。朝日新聞はウィキリークスから得た情報を一般公開せよ =============================================================== 5月13日の朝日新聞「記者有論」の記事は次のような書き出しで 始まっていた。橋本聡前ヨーロッパ総局長が書いた記事だ。 「7千件近い米公電は、小指ほどのUSBメモリーに入っていた。 内部告発サイト『ウィキリークス』から英国で受け取ったのは1月 だ。東京の取材班が3ヶ月あまりかけて綿密に分析し、沖縄や北方 領土などをめぐる日本外交の実相を報道した・・・」 朝日新聞がウィキリークス情報を入手、独占し、誇らしげにスク ープ報道した経緯を見事に述べた文章だ。 しかし朝日新聞が偉いのでは決してない。ウィキリークスの情報が 凄いのだ。 その情報の宝の山を朝日新聞は社をあげて3ヶ月もかけて検証した。 その結果が、たった一日の5月4日の朝日新聞の報道であるとした ら、問われるべきは朝日の責任である。 なぜ朝日新聞は、ここまでの情報を得ておきながら、政府・外務省 の不誠実を国民に代わって追及しないのか。 私はこの橋本前ヨーロッパ総局長の記事の中で、「小指ほどのUSB メモリー」の入手状況の描写のほかに、もう一つ注目した箇所がある。 橋本氏がジュリアン・アサンジュ氏のことを、彼の生い立ちやハッ カー犯罪歴に言及して、「異端のひと」と呼んでいることだ。 それどころか「無政府主義」というアサンジュ批判に与して、彼の ことをそう呼んでいる。 貴重な情報をもらってスクープ記事を書くことが出来たのにこの突き 放した書き方は何だ。 橋本氏はその記事の最期をこう締めくくっている。 「私たちメディアの力量もまた試されていると思う」、と。 橋本氏のこの結語が本音に違いない。朝日は取材力においてウィキ リークスに完敗したのだ。 ジャーナリズム精神のお株をウィキリークスに奪われたのだ。 それを最初から認めた上でアサンジュ氏を素直に評価すべきだ。感謝 すべきだ。 そして何度でも言う。アサンジュ氏のこころざしに報いるためにも、 朝日新聞は入手したUSBメモリーを一日も早く国民に渡すべきである。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)