□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年5月5日発行 第319号 ■ =============================================================== ウィキリークスの衝撃と朝日新聞の責任 =============================================================== 今回のウィキリークスの公電公開が日本の政治、外交に与える 影響ははかりしれないほど大きいものがある。 それは大袈裟に言えば戦後66年の日本の国のあり方を根底から 覆すほど大きなものだ。 しかし、そのように発展していくか、封じ込められて終わってし まうかはひとえに今後のメディアの報道振りにかかっている。 このメルマガではその点に絞って書いてみたい。 ひょっとして政府とメディアが結託してウィキリークスの衝撃を 封じ込めようとしているのではないか、そういう疑念を私は抱く。 朝日のスクープから一夜明けた5月5日の各紙は、さすがに一斉 にウィキリークスの記事を流している。 しかしどの新聞社もニューヨークタイムズの記事が書いたものを 抄訳して報じているだけだ。いかにもおざなりの感がする。 その一方で朝日新聞は「日本外交の病理のあらわれ」と題する 社説を掲げ、この国の政府や官僚たちが国民の利益より対米配慮を 優先していたことを批判している。 日米外交という大問題について、これほど朝日とライバル紙の間 で紙面に差がつくということは、スクープ競争がすべてであるメディ アの世界ではあり得ない事である。 いまメディアの世界の中で、出し抜かれたその他の大手新聞社と、 生情報を3ヶ月も独占して分析することの出来た朝日新聞との間で 大騒ぎになっていなければ嘘だ。 出し抜かれた各社はその事を恥じ、いまからでも遅くないから 朝日と同様に公電のすべてを入手して分析し、国民に知らせなければ ならない。遅れを取り戻すためにも朝日よりすぐれた分析を行い、 国民の知る権利によりよ応えなければならない。もしこれら大手新聞 がニューヨークタイムズ紙の抄訳の転載報道でお茶を濁して終わって しまうのなら、もはやメディアの価値はないということだ。 一方の朝日新聞はその公電を独占的に手にした以上、その入手経緯 を明らかにし、その特権と引き換えに政府・官僚の犯罪を国民に 代わって厳しく糾弾していかなければ嘘だ。 もし朝日が7千点近い公電の評価を5月4日のスクープ特集記事と、 西村陽一ゼネラルエディターの経緯説明と、5月5日の社説で終わら せようとするのなら、朝日は米国の手先となってウィキリークスの 告発の衝撃を最小限に抑え込もうとしていると疑われても仕方がない だろう。 これほどの大スクープをわざわざ大型連休の最中にぶつけてきた ところなども疑わしく思えてくる。 ひょっとして、朝日も含めてこの国の大手メディアは、ウィキリー クスが告発した日米間の「不誠実な」外交関係の実態をこれ以上国民に 知らせてはならないという了解があるのではないか。 日米関係の実態を知っていながら報じてこなかった自らの責任回避 のために、ウィキリークスの告発は自分たちにとっても不都合なもの ではないのか。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)