□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年5月3日発行 第315号 ■ =============================================================== 官僚支配復活を決定づけた菅首相の軽率な国会答弁 =============================================================== 今更オサマ・ビン・ラデンが殺されようが逃げようが驚きは しないが、菅首相の国会答弁には驚いた。 5月2日午前の参院予算委員会で、お盆(8月中旬)までに 希望者全員が仮設住宅に入居できるようにすると発言した事を 質されて、「私が強く指示すれば実現できると、私なりの見通し で言った」と述べたというのだ。 質問をした自民党の林芳正議員は「びっくりした」らしいが、 これには私も驚いた。 私が驚いた理由は、やはり菅首相は官僚と十分に協議すること なく自分の思いつきで仕事をしていた事を知ったからだ。 しかし私がもっと驚いたのは、その事を国会の場で公然と認め、 しかも、自分が強く支持すれば実現できる、と言ったことだ。 おそらく菅首相はそれが政治指導だ、自分は政治指導力を持って 仕事をしている、と言いたかったのだろうが、大きな間違いだ。 官僚を働かすにはおだて上げてその気にさせるか、官僚が一目 置くような指導力をもって官僚を掌握するかである。 菅首相のこの言葉はそのいずれでもない。官僚がもっとも反発 する言葉だ。ただでさえ面従腹背の官僚であるがこれで官僚の 菅首相追い落としは決定的になるだろう。大震災復興策はますます 混迷する。菅首相は行き詰まる。 私が残念に思うのは、これで官僚支配の復活が決定的になったと いうことである。 あたかも鳩山首相が対米関係でしくじって、それを反面教師として 登場した菅首相が全面的に米国に服従したように、これからは、 たとえ菅首相が居座ろうが、他の誰かに交替しようが、真っ先に官僚 との関係修復が前提となる。 政治家がしっかりしていれば官僚支配の復活などはあり得ない ことなのだが、残念ながら今の政界に正しい指導力を持った政治家は 一人もいない。官僚支配の復活は決定的である。 もう一つの政権交代の挫折である。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)