□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年4月30日発行 第309号 ■ =============================================================== 放射能専門家の内閣官房参与が辞任した衝撃 =============================================================== 内閣官房参与に任命されていた小佐古敏荘東大教授(放射能安全学) が29日突然辞任した。 彼が任命されたのは3月16日というから福島原発事故の後だ。 明らかに原発事故による放射能汚染対策のために助言を期待されて の人事だ。 その小佐古参与が、わざわざ記者会見を開き、「今回の原子力災害 で、官邸の対応は場当たり的だ。提言の多くが受け入れられなかった」 (4月30日読売ほか)と政府批判をして辞めた。 翌日(4月30日)の各紙が菅政権は一層窮地に追い込まれることに なるだろうと一斉に書いているのも頷ける。 しかし、小佐古参与の辞任の本当の衝撃は、そのような菅政権に与え る政局的な衝撃ではない。 より深刻な事は小佐古参与が、政府が小中学校の屋外活動を制限する 限界放射線量を年間20ミリシーベルトに決めたことについて語った 次の言葉である。 「年間20ミリシーベルト近い被曝をする人は原子力発電所の放射線 業務従事者でも極めて少ない。この数値を小学生らに求めることは、 私のヒューマニズムからしても受け入れがたい・・・(これを)容認 すれば私の学者生命は終わる」(4月30日毎日) これは衝撃だ。 今回の小佐古参与の辞任発言により父母の抱く放射線不安は更に高ま るだろう。政府の放射線対策が人命軽視ではないのか、という疑念が増 すだろう。 そういえば原発事故が起きて間もない頃、作業員の被曝許容限度が引 き上げられたことがあった。放射能被曝の危険性を少なく見せるため、 ルールをなし崩し的に変えることはあってはならないことだ。 放射能基準値の決定が菅首相の保身の為のなせる業であれば菅首相は 批判されるべきだ。 もし菅首相の知らないところで官僚たちが放射線の基準値を決めている のなら菅首相の指導力が問われる。 いずれにしても放射線被害に関する数値について国民に疑念を持たせる ようなことを繰り返していては、いかなる政権も長続きしないだろう。 了
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天木直人(元外交官・作家)