□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年4月21日発行 第289号 ■ =============================================================== 日本の電力行政を見直す時が来たと思う =============================================================== 今度の原発事故は様々な意味でこの国の根幹の見直しを迫って いる。原発事故という不幸を逆手にとって国民のためにその不幸 を活用することだ。それがせめてもの被災者の犠牲に報いることだ。 電力行政を見直すこともその一つだ。 我々が当たり前のように受け入れてきたこの国の電力行政もまた その他のあらゆる国策と同様に壮大な国民軽視である。 その事を4月21日の読売新聞「基礎からわかる電力会社」が 教えてくれている。事実上の地域独占であり、狭い国土で二つの電力 周波数にわかれたままだ。こんな「世界にも特殊な」体制が手つかず のままだ。 電力行政を一手に担っている経済産業省はいくらでも口実を並べる ことはできる。電気は公共物だ、安定供給が必要だ、過当競争を防ぐ 必要がある、などなど。 しかし問題は、官僚と電力会社でその行政をすべて決めていること だ。その実態が国民に知らされていないことだ。 読売新聞の記事は書いている。欧州には、国営や公営の電力事業者 が多かったが、1990年代にEU(欧州連合)が電力自由化を導入し た過程で民営化された。料金が下がり、顧客は電力の購入先を選ぶこ とができるようになった、と。 私が注目したのは今日(4月21日)発売の週刊文春4月28日号 の鈴木敏文セブン&アイホールディングス会長の次の激白だ。 90年代後半に電気事業審議会の委員を務めた鈴木氏は公けの場で 度々「米国と比較すると日本の電気代は約3倍高い」と主張し、料金 引き下げを迫ったが、その度に「停電が少なく、世界最高品質」と一 蹴され、政官財がスクラムを組む電気業界の厚い壁を知ったという。 因みに週刊文春が引用している数字では、2009年のデータで 日本の電気料金が一時間キロワットで17・17円に対し、米国6・7円、 韓国6・21円、中国9・07円であるという。 ある企業経営者が「なぜ電気料金が下げられないのか」と東電幹部に 質したら「下げてもいいけど停電しますよ」と言われたという。 企業でこれだから、一般国民は何を言ってもはじまらない。言われる ままに従うしかない。停電するといえば従い、節電せよといわれれば 従うほかはない。 なぜここまで東電が強気になれるのか。それは官僚ともたれあって いるからだ。そして国民のための政治家は官僚の言うままだ。 その週刊文春は別のところで、石破自民党政調会長の長女が今春東電に 入社したと書いていた。一般国民とは別の世界がこの日本にはある。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)