□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年4月20日発行 第286号 ■ =============================================================== 原発宣伝の片棒をかついでいた多くの文化人について思う =============================================================== 今度の原発事故に関する様々な記事の中で私が最も驚いたもの の一つに原発推進の宣伝工作の凄まじさがある。 それを一番衝撃的に報じていたのが週刊金曜日4月15日号の 「東京電力に群がった原発文化人」という特集記事である。 いかにも原発推進派と思われる御用芸人や評論家、文化人が 名を連ねているのは当然としても、驚いたのは、まさかと思うよう な人の名前が多くあることだ。テレビやメディアでおなじみの 顔ぶれのなんと多いことか、と驚く。 そしてさらに驚くことは、その広告謝礼の大きさだ。アントニオ 猪木の秘書だった佐藤久美子著「議員秘書の捨身の告白」(講談社) を引用する形で次のようなエピソードが紹介されている。 すなわちかつて青森県知事選候補の応援を頼まれた時、原発反対 派の候補から150万円の謝礼で応援に行くことを一旦決めたものの、 その後原発推進派から1億円出すといわれて慌てて150万円を返し たという。 評論家の西部邁(にしべすすむ)が、一度、電力会社主催のシン ポジウムに呼ばれて、科学的に絶対の安全はないと言ったら、二度と 声がかからなくなったと笑っていた、というエピソードも象徴的だ。 賛成する者は徹底してアメを与えるが反対意見をいう者は排除する。 それはこの国の支配体制が権力犯罪を行なう時の常套手段だ。 しかし、私はこの週刊金曜日の記事のように、原発宣伝の片棒を 担いだ者たちを糾弾するだけではだめだと思う。 筋金入りの原発推進者はそれに恥じることなくこれからも原発の 安全神話を唱え続けるだろう。 しかし原発問題を詳しく知らずに、カネのために、あるいはメディ アに重用されたいばかりに宣伝に協力した者たちも多いはずだ。 それを軽率だと批判する事はたやすい。 しかし今度の原発事故が起きなかったら果たしてどれだけの国民が ここまで原発問題の深刻性に気づいただろう。核物質の非人間性を知る 事になっただろう。 重要な事は変わることだ。変われる勇気を持つことだ。 今度の事故を通じてこれら芸人、文化人たちが、原発の危険性に 気づき、核物質は人間と両立しないという事に気づき、変わってくれる かづかだ。 なによりも、支配者たちの権力犯罪を批判する側に回ってくれるか どうかだ。 彼らの多くが変わる時、日本もまた変われる。 今回の原発事故が日本を変えてくれる事を期待する。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)