□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年4月18日発行 第279号 ■ =============================================================== マハティール健在なり =============================================================== マレーシアの元首相であるマハティール氏は、私が外交官人生 の中で出会った指導者の中でも、最も優れた指導者の一人である。 そのマハティール元首相の健在振りを4月18日の日経新聞で 見ることができた。 連載「大震災 日本を立て直す」の2回目にマハティール元首相 のインタビュー記事が掲載されていた。 私が注目したのは次の言葉である。 「(今度の大震災で)日本の国力が低下すれば、中国が競争上 優位に立ち存在感が高まるだろう。しかし、そもそも中国の成長を 止めることなど出来ない。人口が多く、優秀な人材がそろう。何より 彼らは共産主義だが、ビジネスに精通している。むしろ中国を巨大 市場としてフル活用し震災から復興に利用する、というくらいの発想 が必要だ・・・」 「安全保障面では、日米が中国を敵視したり、封じ込めたりしよう とすればするほど、中国は軍備を増強する。その資金力も備わってきた。 だが、日本は武器輸出国ではないためアジアの軍拡競争にあらゆる 意味で利点がない。マレーシアも中国との間で領有権問題を抱えるが、 互いの主張を出し合い、対立ではなく対話で問題を解決に導く路線を 打ち出している・・・」 国内に中国系マレーシャ人を3割も抱えているマレーシアにとっては 中国は警戒を要する国だ。 そのマレーシアを22年間の長きにわって担ってきた指導者の言葉 がこれである。 マハティール健在なり。 おりしも4月18日の各紙は、クリントン国務長官の訪日にタイミング を合わせるように米国製ロボットを福島原発建屋内に導入した日本政府の パフォーマンスを、こぞって報じていた。 その一方で毎日新聞は、中国が原子力事故に対応するロボットの提供を 日本政府に申し入れたが日本政府がこれを断った、という香港紙サウス・ チャイナ・モーニング・ポストの記事を掲載していた。 大震災復興という非常事態下でさえも、日米同盟礼賛を繰り返す日本 政府と日本のメディアに、私は絶望感すら抱くのである。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)