□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年4月18日発行 第280号 ■ =============================================================== ひろがらない反原発の国民的気運とかすかな希望 =============================================================== クリントン国務長官の訪日にタイミングを合わせるかのように 東電が事故を収束させる工程表を発表した。 その裏には日本の対応を危惧する米国を安心させるための菅民主 党政権の強い働きかけがあったという(4月18日朝日、日経)。 どうやら政府は米国に釘を刺されて原発の継続を決めたのではない か。原発直後に高まった反原発の気運が抑え込まれていくような気が する。 それはあたかも日米同盟に反対する声が拡がって行かないことと 同じだ。 大手メディアがその方向に世論を誘導していることも全く同じだ。 原発反対を唱える社民党や共産党が政治の場で孤立している。 孤立してもなお彼らは共闘できない。 それもまた日米同盟と同じだ。 そのような悲観的状況の中で唯一の救いは、今度の原発事故を きっかけに、保守・体制側の内から反原発の声が出始めた事である。 4月18日の毎日新聞「風知草」で山田孝男専門編集委員が書い ている。 「中部電力の浜岡原子力発電所を止めてもらいたい・・・政府 関係者に取材を試みて、筆者はそう考えるに至った・・・(浜岡 原発の危険性を指摘する声が)反原発知識人の懸念にとどまらない ことを筆者は・・・思い知った。旧知の政府関係者から『浜岡は止め なくちゃダメだ。新聞で書いてくれませんか』と声をかけられた のである・・・」 政府関係者から書いてくれと言われたから書いたというのでは 笑い話だが、それでも御用記者が「もはや誰が見ても危険な浜岡原発 を止めなければならない」と自らのコラムで書くようになったのだ。 同じく4月18日の産経新聞は佐伯啓思京都大学の次のような 意見を掲載していた。 「・・・日本に原子爆弾を投下して放射線をまき散らしたアメリカ が、福島原発での日本の対応や情報提供に注文をつけたり、放射線 拡散に神経質になっている。また日本もアメリカの助力を必要として いる。考えてみればなんとも皮肉というか苦い構図というほかはない ・・・アメリカが開発した・・・原発によってエネルギーを管理し、 経済成長によって人間の幸福を増進するというアメリカ的な価値を すっかり取り入れていた日本は確かにアメリカの「トモダチ」という ことになる・・・自然の脅威は、それを(科学主義の力で)支配できる とした人間の驕りを打ち砕いた・・・今度の災害が示したことは、 「驕り」でも「恐れ」でもなく、自然への「畏れ」を持つことである ・・・」 このような認識が国民の間に拡がって行くならば原発はいつか必ず なくなるだろう。 そしてそのことが最後は日米同盟至上主義に終止符を打つことになる のかもしれない。 原発気運が拡がらない悲観的な中で、かすかな期待を私はそこに 見出そうとしている。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)