□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年4月14日発行 第268号 ■ =============================================================== イスラエルの医療支援を絶賛する毎日新聞の論説委員 =============================================================== どうでもいいことのようだが、私にとっては気になる記事 であるので忘れないように書いておく。 4月14日の毎日新聞コラム「発信箱」で布施広という論説 委員が宮城県で医療支援活動を行なったイスラエルの医療チーム を絶賛していた。 外国からの震災支援に感謝するのはいい。 しかし、米国の支援は特別としても、その他の多くの支援国の 中でなぜイスラエルだけをわざわざ大きく取り上げるのか。 「・・・(避難場所の)敷地内に翻る『ダビデの星』のイスラ エル国旗が目を引く。同国の医師14人を含む約60人のチーム が3月末に現地入りして医療活動を始めた・・・」 その書きぶりはあまりにも大袈裟だ。 しかし私がもっと注目したのは次の箇所だ。 「・・・国防軍所属のエイレト・シャハル医師(40)は、 テレビで東北の惨状を見て医療チームに志願した・・・シャハル さんに『家族が恋しいでしょう』と聞くと、彼女の顔がかげった。 夫と二人の子供が住むイスラエル南部の街ベエルシェバは数日前 から、イスラム武装組織のロケット弾攻撃を受けていたからだ。 『イスラエルでは明日は何が起きるかわからない。私たちはそんな 境遇に慣れているんですよね』と彼女は笑った。余震や原発事故に 苦しむ日本と、中東で敵意に囲まれるイスラエルが、一瞬だけ 重なる・・・」 そこには見事にイスラエルがパレスチナを弾圧している事実が 捨象されている。 イスラム抵抗組織という「悪」と闘うイスラエルの正しさを言外 に伝えている。 なによりもそのイスラエルと日本を、たとえ「一瞬だけ」でも 重ね合わせるのだ。 なぜ日本から遠く離れたイスラエルという小国が、ベンアリエ 准将を隊長とした60名もの医療チームを送ってきたのか。 4月14日の読売新聞は、この支援隊は2週間の活動を終え 13日までに全員帰国したとある。 診療した被災者はわずか約220名だという。 レバノンにいた頃よく耳にした言葉を思い出す。 イスラエルという国は自国の安全保障を全てに優先する。それ以外 の無駄なことは一切しない国だ、と。 友好国をアピールすると同時に、自国の安全保障政策の参考にする ために、日本の被曝状況とその対応振りをつぶさに観察する目的も また確かにあった、そう私は思っている。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)