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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

中野剛志の「TPP亡国論」は今こそ国民が必読すべき書である
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年4月12日発行 第259号 ■     ===============================================================   中野剛志の「TPP亡国論」は今こそ国民が必読すべき書である       ===============================================================  買っておきながらつい読みそびれる本がある。ツンドク という奴だ。  中野剛志著の「TPP亡国論」(集英社新書)という本もその 一つだった。  TPP論議が盛んだった時、新聞紙上でTPP参加に反対して いた彼の論評は説得力があった。  だから彼の書いた「TPP亡国論」を本屋で見かけて、思わず 買ってしまった。  その後、読もうと思いながら読みそびれた。  そして大震災が起こり、もはやそれどころではなくなった。  それよりもなによりも、このメルマガで書いたように、米国が 自らの保護品目の例外扱いを臆面もなく主張するようになって、 TPPが特別のものではなくただの貿易交渉になってしまった からだ。  そうして私のTPPへの関心は薄れてしまった。  しかし買った本は目を通さなければ損だというケチな考えで 軽い気持ちでこの本を読み始めた。  そして、たちまちのうちに私はこの本のとりこになった。そして 一気に読み終えてしまった。  すごい本だ。  経済産業省の産業構造課課長補佐から京都大学へ出向中のキャ リア官僚が書いたこの本は、TPP推進論の誤りを国際貿易・金融 の観点から、実に明快かつ網羅的に解説している。  TPP推進がいかに愚かなことかがわかる。  菅首相が、その実体を何も知らずに、突然TPPを最重要政策と 言いだし、「開国」などという間違った言葉を使って旗を振った ことの胡散臭さがわかる。  しかし私が中野氏の言葉で注目したのはそのことではない。  谷内正太郎元外務事務次官(現早稲田大学客員教授)の雑誌 「ウェッジ」(2011年1月号)への寄稿文を引用し、谷内氏の 「TPP参加は日米安保の観点からも重要だ」とする主張を、根拠 なき対米コンプレックスと切り捨てているところである(222― 236頁)。  元同期生で、同じ時期をともに米国研修で過ごした私は彼が米国に 対する鬱屈した感情を持っていることを知っている。  無理をして「日米同盟は重要だ」と唱えている事を知っている。  それを若い世代の経済官僚が見事に見抜いたのだ。  そして、あたかも谷内氏は旧い世代、時代遅れの世代であると 言わんばかりに、自分たちは米国に対する反感もなければ崇拝もない。 鬱屈した感情など持ち合わせていない、と批判しているのだ。  この自然な感情で米国に接する事こそが重要なのである。  極めつけはこの本の「はじめに」で書かれている中野の次の言葉だ。  「この本を出すにあたっては、私は何とも言えない漠然とした不安 を感じています。といっても、私個人の身に何か危険が及ぶとか、 そういった類の不安感とは違います・・・(私を不安にしているのは) わが国における議論や物事の進み方の異様さです。  一番怖いのは・・・政治家、財界人、有識者あるいはマス・メディア が、ほぼすべてTPPへの参加に賛成しているにもかかわらず、その 根拠があまりにも弱く、その論理があまりにも乱れているという点です ・・・  私は、TPPへの参加に賛成する議論を追っているうちに、ある共通 する特徴に気づきました。それはどの議論も・・・あるコードが出ると、 それに反応してブレーカーが自動的に落ちて、思考回路を遮断してしまう ような感じです・・・」  「TPP」という言葉を「日米同盟」と替えて見るがいい。  「TPP]という言葉を「原発」と替えて見たらいい。  いや、「TPP]という言葉は、この国の支配体制側が守ろうとし、 あるいは推進しようとするあらゆる政策に置き換えられる。  当たり前のように宣伝され、それに反対することがあたかも 間違っているかのように思い込まされているあらゆる事に置き換え られるのだ。  そしてまさしくTPPはそういう政策の典型であるということだ。  それを現職官僚でありながら喝破し、世に明らかにしている中野剛志 氏という人物もまた、私の側に立つ一人なのである。                             了

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