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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

汚染水放出の際の各国通報に見るこの国の外交姿勢
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年4月9日発行 第250号 ■     ===============================================================    汚染水放出の際の各国通報に見るこの国の外交姿勢        ===============================================================  放射線汚染水を海へ放出した事について、それを関係各国に 事前通報したかどうかが、大きな外交問題になっている。  私は、外国への事前通報の有無もさることながら、こんな重大 な決定を、自国民やその被害を最もこうむる漁業を所管する農水 大臣に知らせなかったことこそ問題であると思うが、ここでは 外交面に限ってその問題点を指摘する。  4月9日の読売新聞によれば外務省が諸外国に通報したのは 放出のわずか3時間前だったという。  すなわち東電と経産省が調整を始めたのが4月4日午後3時頃。  東電の記者会見発表が3時55分頃。  外務省が「定例」の在京外交団向け説明会で「簡単に」説明し たのが4時。  その後各国大使館に「ファックス」で送ったという。  そして放出が始まったのが7時3分だ。  外務省はこれをもって「放出前に各国に通報した」と強弁する。  それに対し真っ先に韓国が事前通報はなかったと不満を述べ、 今日(4月9日)の読売新聞ではロシアのベールイ駐日大使が 「知らせを受けたのは放出が行なわれた後だった」と情報伝達の 遅れに不満を漏らしたという。  どちらが嘘をついているのか。  おそらくどちらも嘘ではない。  嘘ではないが結果的に嘘になったのだ。  その鍵は外務省の「定例」、「簡単」、「ファックス」による 通報にある。  このような重要な決定を通報する時は、必ずそれが相手方に問題 意識を持って伝わっていなければならない。  形式的に伝えるだけでなく、それが伝わって相手がどのような 反応を見せたかを確認しなければ「伝えた」ことにはならない。  おそらくそのような伝え方がなされていなかったに違いない。  時間的にその余裕がなかったのか、あるいは相手に反発されて放出 ができなくなることをおそれたのか、いずれにしても事実上は事前 通報がなされなかったのだ。  外務省が言っている事は、あくまでも形式であって、アリバイ づくりである。  実はこのようなことは外務官僚がよく使う手口である。  かつて北朝鮮の代表との協議が実現したかどうかの問題で、協議 などとはとても呼べないのに、廊下で無理に袖をつかんで言葉をかけ、 それを称して「協議した」と強弁した外務官僚がいた。  中国の習近平副主席の天皇表敬問題もそうだ。  あの時中国側の天皇陛下に対する拝謁要望が日本の首脳に知らされて いなかったとしたらどうか。  外務官僚は伝えたと言って責任逃れをしたが、それを紙切れ一枚で すませていたとしたらどうか。  局長や秘書官が首脳にその重要性を十分認識させる形で伝えて いなかったとしたらどうか。  習近平副主席の重要性を考えれば天皇陛下拝謁を認めるのは外交的 には当然の決定である。  あの時大騒ぎになったのは、その政治決定自体ではない。  それが内規に反して一ヶ月前に決められたことだった。  それが中国のゴリ押しや小沢一郎の「天皇の政治利用」とされて 批判された。  もし中国の要求が一ヶ月以上前になされていたにもかかわらず、 その要求が日本の首脳に正しく伝わらず、外務省と宮内庁の官僚の間 でのやり取りにとどまっていたずらに時間を浪費していたとしたら どうか。  いつまでたっても決定されないことにあせった中国がたまりかねて 不満を述べ、あるいは小沢一郎に頼み込み尾、こで初めて小沢一郎が それを知って決まったというのが真相だったらどうか。  あの時がそうであったという確証は私にはない。  しかし、今度の汚水放出の時と同様に外務官僚の仕事の無責任さと アリバイ作りにより生じた不必要な摩擦である可能性は高いと 私は思っている。                         了

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