□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年4月4日発行 第233号 ■ ================================================================== 原発事故の報道で決して触れられない二つのタブー ================================================================== 原発については決して触れてはならない多くのタブーがある。 その中でも、次の二つは大手メディアが決して触れない二大 タブーに違いない。 原発事故が起きてから随分と色々な事が報じられてきた。 しかし注意して見てきたのだがどこを探しても次の二つは報じられ ていない。 その一つは福島原子力発電所のほかにも全国に多く存在する原子力 発電所の現状である。 その存在や危険性を一般論として報道するものはある。 しかしそれらが今如何に危険な状況下にあるか、何かあったら福島 原発事故の被害どころではない、と警鐘を鳴らす記事を大手メディアが 正面から報じたことはない。 ただでさえ原発反対の感情が高まる恐れのある中で、これ以上国民が 真実を知れば原発開発の中止、原発廃止の流れは決定的になるからだ。 もう一つは原発がミサイルで攻撃された時の危険性だ。 この事に国民が気づけば米国の核抑止力の正当性が吹っ飛ぶ事になる。 日米同盟など何の役にも立たなくなる。 そうなのだ。狭い国土に首都機能や人口が密集している日本にこれ だけ多数の原発を持つということは、安全保障政策上、最悪の政策で ある事が素人にも露呈する。 なぜこんな馬鹿な、矛盾した政策がまかり通ってきたのか。 それはこの国の政策が統一した戦略で決められて来なかったからだ。 原発推進の経済産業省と安保政策を引き受ける外務・防衛省がそれ ぞれの省益優先で政策を進めて来たからだ。 しかし、この二つのタブーについては大手ディアもいつか誰かが 触れざるを得なくなる時がくる。 そう思っていたら4月4日の朝日新聞「風」というコラムのなかで 中東アフリカ総局長の石合力記者がついに書いた。 「中東の原発は政変・紛争に耐えられるか」と題するその記事は、 あくまでも中東についてだ。 民衆革命や内戦が続く中東のどこかに、もし原子力発電所 があればどうなっていたか、という問題提起である。 そんな中東に原発輸出を進める日本の海外戦略の無責任さへの警鐘 である。 しかし石合氏がその記事で本当に言いたい事は明らかだ。 これほど原発を持っている日本は戦争が起きたときどうするのだろう、 という問題提起である。 日本の安全保障政策を語る学者や専門家は、福島原発事故が示した 原発攻撃の危険性について口を閉ざしてはならない。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)