□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年3月29日発行 第211号 ■ ================================================================== それでも揺るがない原発推進派学者たち(2) ================================================================== アエラがインタビューした原発推進派の学者や専門家の多くは、 純粋な学者や専門家ではない。その多くはいわゆる御用学者や行政 に携わってきた専門家だ。 だから原発推進の理由も、学問的な見地というより政策的立場から、 「エネルギーの安定確保、温暖化対策の観点から原子力発電は不可欠」 というものである。 そしてアエラは、それを突き詰めれば結局「原発は安い(儲かる)」 という事に突き当たると喝破する。 その一方でアエラは疑問を呈する。 原発の開発費や建設費は莫大である(原発一基3千億円)。本当に 儲かるのか、と。 そう疑問を呈した上で、アエラはこの素朴な問いに見事に答えて 見せる。 これがアエラの記事のハイライトである。 すなわち日本の電力会社には絶対に儲かる仕組みがある。それが電気 料金を決定する「総括原価方式」だという。 「総括原価方式」という聞きなれない言葉の意味は何か。 それはすなわち、発電所の建設や運営に要する莫大な「原価」の上 に利益を加えたものが電気料金になる。 つまり選択権のない消費者へコストを転嫁させる方式なのである。 いやコストにとどまらず利益まで負担させる。 これである。 そしてそれを認めてきたのが政府・経済産業省なのである。 儲かる仕組みはそれだけではない。 燃料のウランは、希少資源である上に石油と同様枯渇が予想される が、いったん手に入れれば核燃料サイクルによって無尽蔵のエネルギー となる。 すなわち原子力発電は利益を生む金の卵であり、原子力産業が巨大 化する理由がここにあるというのである。 こう考えていくと原発推進派と反対派の歩み寄る事のない対立の 本当の理由は、決して純粋な科学の問題ではないことが分かる。 すなわち、経済発展、収益拡大、科学万能を優先するか、それとも 自然と共生した人間らしい生き方を目指すか、大袈裟に言えば国のあり 方、人生の生き方の違いに帰着する問題である事がわかるのである。 こよなく政治的な選択の問題なのである(続)。
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)