□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年3月19日発行 第190号 ■ ================================================================== カダフィ政権への武力介入を容認した国連安保理決議をどう評価するか ================================================================== 大震災のニュースの裏で世界の平和と国連の役割についての大きな 動きが見られた。 武力介入も辞さないという国連安保理事会の決議が、あれほど強硬 姿勢を崩さなかったカダフィ政権を屈服させたのだ。 カダフィ政権は18日、「反体制派と即時停戦し、すべての軍事行動 を停止する」と国連安保理決議受け入れを宣言した。 これは国連による平和維持活動にとって大きな意義を持つ出来事だ。 もしカダフィ政権が国連安保理決議に反して反体制派への武力攻撃を 続けるならば、国連安保理主要国が武力介入し、カダフィ政権との間で 戦争が起きるおそれがあった。 その結果多大な犠牲者がでることになった。 絶対的平和主義者は、あらゆる武力行使は避けるべきだというだろう。 だから今回の国連安保理決議は賛成できないというだろう。 しかし、私の考えは違う。 戦後の世界の平和維持は、最後は国際社会の一致した合意による「平和 の敵」に対する国連の武力介入で実現される。 それが、世界が認めた国連憲章だ。戦後の世界平和実現のよりどころだ。 日本の憲法9条もそれを前提として出来ている。 問題は これまでの国連がその機能を十分に果たせなかった事だ。 戦勝国で独占してきた国連の決定権が、彼らの意見の不一致(拒否権発動 の応酬)や米国の単独主義のために、公正かつ機動的に行なわれなかった為 である。 米国のイラク攻撃を阻止できない一方で、イスラエルのパレスチナ弾圧は 放置されたままだ。 国連の平和維持活動については、もう一つの大きな制約があった。 内政干渉になるという理由で、国連は主権国家の紛争にはこれまで国連 憲章を適用できなかった。しようとしなかった。 今度の国連安保理事会の決定は、この二つの国連の課題を克服した。 すなわち、リビアに対する軍事介入に消極的だった米国が最後にこれを 容認した。ロシアと中国は、最後は国連決議に反対しなかった。 市民を空爆するカダフィ政権に対する人道上の罪は、もはや内政不干渉 という国家間の約束を克服し、国連の武力介入を認めることとなった。 この国連の断固たる決意の前に、さすがのカダフィ政権も譲歩せざるを えなかった。軍事行動は回避されたのだ。 もちろん、今後はカダフィ政権と反体制派のどちらを正統とみなすかに ついて政治的交渉が残る事になる。 それでも、戦争よりはましだ。 軍事衝突は回避されたのである。 カダフィ政権による市民攻撃は停止されたのである。 私は期待する。今回のような国連安保理決議が、戦争や国際的な非人道的 行為の抑止の為に、今後とも公正かつ機動的に成立、適用されていくことを。 私は今回の安全保障理事会の決議をそれほど高く評価するのである。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)