Foomii(フーミー)

天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

日露関係最悪の中で、それでもロシア極東に進出するトヨタ    
無料記事

□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月10日発行 第94号 ■    =============================================================   日露関係最悪の中で、それでもロシア極東に進出するトヨタ                       ==============================================================  2月10日の日経新聞が一面トップで大スクープを掲載していた。 それはトヨタが三井物産、ロシア自動車大手ソレルスと組んで、極東 ウラジオストックで乗用車の生産を始める、というニュースである。 おりしも日露関係は北方領土問題をめぐって最悪の時である。 菅民主党政権の弱体ぶりを見透かしたかのようにロシアは大統領の国後 訪問をはじめ、どんどんと領有権を既成事実化する行為に出ている。 これに対し、何も手を打てない菅民主党政権は、その無策の裏返しの ように言葉だけはエスカレートする。 あたかも弱腰外交という批判を避けるための国内向け発言の如くだ。 そしてそれが更にロシア政府の反発を受け、いまや日露関係は最悪の 状況である。 普通であればこのような二国間関係が最悪の時は、民間企業はその行動を 自粛するものだ。  それにも関わらず、トヨタは極東ロシアへの進出を決めた。  そして私はこれを歓迎する。  この事は、かつて日米貿易摩擦が激しかった頃、米国が日本政府に対し 日本車の対米輸出規制を求めてきた時のトヨタの反応を思い起こさせて くれた。  あの時米国のカンター通商代表は訪米中の橋本龍太郎通産相に数量制限 を求めた。  自由貿易を主張する通産官僚とそれに乗せられた橋本大臣は、政府が民間 企業の活動を数的に制限することなど出来ない、訴えられたら訴訟で負ける、 とまで言って突っぱねた。  その裏でトヨタは米国政府と輸出規制数量で合意していたのだ。  これ以上政府間の交渉がこじれて、米国が禁輸制裁などを課してきては たまらない、自粛規制で受ける損失のほうがはるかに小さい、と判断した わけだ。  そのトヨタの動きを見てはしごを外された日本政府は一気に数量規制 に動く。  今度のトヨタリコール問題決着で見せたトヨタの態度もまさにそれである。  正論を言って下手に米国を追い詰めるよりも貸しをつくって将来に備える。  面子や原則論よりも長期的な利益を念頭に置いて策を講じる。  そこが民間の強みだ。原則よりも実利だ。政府はそうはいかない。原則を 譲歩することはできない。  それもまたその通りだ。  どちらがいいか悪いかという話ではない。  要するに官民外交の使い分けによって二国間関係を有利に運ぶ。そのための 日本の技術力であり資金力ではないのか。  その日経新聞はこう書いている。「北方領土問題で冷え込む懸念が出ていた 日露の経済協力が活発化する可能性がある」。  同じく2月10日の東京新聞は、今日から始まる前原外相の訪露について 「冷える関係 温められるか」と言う見出しで最悪の時期の訪露を懸念する。  前原外相はトヨタの動きに助けられるのかも知れない。  いや、ひょっとしてこの動きを知っているからこそ訪露するのかも知れない。  民間経済協力問題が進む見通しがあるからこそ、北方領土問題で強い事を 日本政府は言えるのかもしれない。  前原外相の訪露の成り行きから目が放せない。                            了

今月発行済みのマガジン

ここ半年のバックナンバー

2024年のバックナンバー

2023年のバックナンバー

2022年のバックナンバー

2021年のバックナンバー

2020年のバックナンバー

2019年のバックナンバー

2018年のバックナンバー

2017年のバックナンバー

2016年のバックナンバー

2015年のバックナンバー

2014年のバックナンバー

2013年のバックナンバー

2012年のバックナンバー

2011年のバックナンバー

2010年のバックナンバー

2009年のバックナンバー

このマガジンを読んでいる人はこんな本をチェックしています

月途中からのご利用について

月途中からサービス利用を開始された場合も、その月に配信されたウェブマガジンのすべての記事を読むことができます。2024年11月19日に利用を開始した場合、2024年11月1日~19日に配信されたウェブマガジンが届きます。

利用開始月(今月/来月)について

利用開始月を選択することができます。「今月」を選択した場合、月の途中でもすぐに利用を開始することができます。「来月」を選択した場合、2024年12月1日から利用を開始することができます。

お支払方法

クレジットカード、銀行振込、コンビニ決済、d払い、auかんたん決済、ソフトバンクまとめて支払いをご利用いただけます。

クレジットカードでの購読の場合、次のカードブランドが利用できます。

VISA Master JCB AMEX

キャリア決済での購読の場合、次のサービスが利用できます。

docomo au softbank

銀行振込での購読の場合、振込先(弊社口座)は以下の銀行になります。

ゆうちょ銀行 楽天銀行

解約について

クレジットカード決済によるご利用の場合、解約申請をされるまで、継続してサービスをご利用いただくことができます。ご利用は月単位となり、解約申請をした月の末日にて解約となります。解約申請は、マイページからお申し込みください。

銀行振込、コンビニ決済等の前払いによるご利用の場合、お申し込みいただいた利用期間の最終日をもって解約となります。利用期間を延長することにより、継続してサービスを利用することができます。

購読する