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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

ボロボロ菅民主党政権の裏で外務官僚が対米外交をほしいままにしている    
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月9日発行 第90号 ■    =============================================================  ボロボロ菅民主党政権の裏で外務官僚が対米外交をほしいままにしている                       ==============================================================  今日(2月9日)の読売新聞が要旨次のような一段の小さな記事を 掲載していた。  ・・・2月9日、ワシントンで日米間の対中戦略協議の初会合が開か れる。日本側から鶴岡公二総合外交政策局長、杉山晋輔アジア大洋州局長、 米側からカート・キャンベル国務次官補らが出席する・・・  これだけの小さな記事だ。他紙には、このような協議についての記事 すら見当たらない。  それほどどうでもいい事だというのだろう。官僚同士の協議など日常 茶飯事であり記事にする必要もないということなのだろう。  しかし、この記事ほど重要な記事はない。  この日米の官僚同士の話し合いで、日本の対米外交のすべてが決め られるといっても過言ではないのだ。  しかも官僚同士の話し合いである。そこで何が話され、何が決められる かは決して表に出ない。国民には知らされない。いや、首相や外相でさえ 正確な事は伝えられないのだ。  カート・キャンベルは今のオバマ政権にあって対日外交のすべてを任さ れている米国の官僚だ。  鶴岡や杉山は対米従属に徹して出世する日本の外務官僚たちの典型たちだ。  そしてこの協議には、報道では触れられていないが駐米大使の藤崎一郎が 間違いなく出席する。  藤崎は鶴岡や杉山の大先輩で、文字通り対米従属を貫いて駐米大使に なった外務官僚である。  この日米間の官僚たちが対中戦略を話し合う。  言うまでもなく対中戦略はこれからの日米同盟の最大のテーマである。  日米同盟は日本の将来を決定づけるもっとも重要な外交である。  しかもその日米同盟が歴史的転換期にある。菅首相の訪米を控えて 新日米同盟宣言がなされようとしているからだ。  その新日米同盟宣言とは従来の日米安保体制を超えた対米軍事同盟の 永久化、固定化である。  米国の相対的地位の低下とそれにともなう世界の米国離れという歴史的 流れに逆らって、日本だけがますます米国の忠実な属国に向かって奔走 している。  その先導役こそが外務官僚たちなのである。  もちろん官僚主導の日米同盟は自民党時代にも一貫して行なわれていた。  しかし自民党時代の対米外交は官民一体となっていただけわかりやす かった。  自民党政治家の中には米国との強いパイプを持っている有力政治家が何人 か存在し、それらが官僚に睨みを利かせていた。  曲がりなりにも政治主導が行なわれていた。  ところが菅民主党政権の政治家は、菅首相をはじめとしておよそ外交に 疎い。  一番重要な国である米国との関係は希薄だ。米国の事を何も理解して いないような政治家ばかりだ。  ただでさえおぼつかない菅民主党政権であるのに、今の菅民主党政権は 外交どころではない。  政権の存立さえもが危うくなっている。  その隙間をついて外務官僚が対米外交を独占し、あたかも米国の代理人と なって新日米同盟づくりをほしいままにしている。  それが2月9日の読売新聞の記事の意味することなのだ。  この深刻性を指摘する者はいない。  知っていてもあえてそれを書くものはいない。  しかし私ははっきりそれが見て取れるのだ。  河野駐露大使の政府批判発言なども外務官僚が菅民主党政権を見限った あらわれに違いない。政権を取り戻したい自民党政権に対するメッセージ に違いない。  自分たちと一緒になってもう一度かつての自民党・官僚一体の外交を 行ないませんか、と。  今の日本の置かれている政治状況は深刻である。  そのすべての責任は、国民に期待されて政権を担った民主党政権が 菅・仙谷体制になって国民を裏切り、自民党政権下の政策に変節した、 そのことにある。そのことにつきる。  自民党を超えられない政治家たちが自民党のまねをして対米従属に走る。  それは見たくもない悪夢である。                                                   了

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