□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月7日発行 第85号 ■ ============================================================= エジプトの民主化を叫ぶ米国のジレンマ ============================================================== エジプトの新政権をめぐって米国とエジプト反政府側との駆け引き が続いている。 それを2月7日の毎日新聞「発信箱」で欧州総局の笠原敏彦記者が つぎのように書いている。 「・・・あるテレビ解説者が指摘していた。『これはイデオロギー とは関係のないブレッド・アンド・バター革命(生活の糧のための 革命)』です。高い失業率や食料品高騰などが引き起こした自発的 デモという意味だ。 (しかし)それだけなのか。旧知のアラブ人ジャーナリストに聞く と、『米国の国旗を燃やしたり、大使館に押しかけたりしないのは 国際社会の支持を得たいからだ』との説明だった・・・」 私もそう思う。そしてそれは賢明な判断だ。 その一方で笠原記者は、同じく国際社会の支持を得ながら米国の 国益を追求するというジレンマにある米国について、次のように書い ている。 「・・・オバマ大統領は『エジプトの指導者を決めるのは他国の 役割ではない』と語った。この発言に対し、あるエジプト人は、それ ならなぜ米国はイラクやアフガンに軍事侵攻して政権を倒したのか、と 疑問を投げかける・・・中東全体へのドミノ効果を懸念して再び短期的 な安定を模索すれば、その先に待つのは、中東における米国の影響力の 一層の低下だろう」、と。 もっと米国に辛らつなのは同じ毎日のワシントン支局草野和彦記者の コラム記事「FROM ワシントン」である。 草野記者は06年のパレスチナ評議会選挙の際に見せた米国の欺瞞を ついて次のように書く。 中東民主化構想の名の下に無理やり実施させた06年のパレスチナ 評議会選挙でイスラム原理主義組織ハマスが圧勝したとたん、パレス チナの民意を否定してファタハのアッバス氏を議長に据えた米国。 「イスラム教徒との新たな関係」を掲げたオバマ大統領だが、どこまで それを貫けるのか、覚悟が問われるのはこれからだ、と。 米国もエジプト反政府側も、エジプト国民、アラブ国民、国際世論を 相手に支持取り付けの為の壮絶な駆け引きを行なっている。 これが国際政治だ。外交だ。米国もまた必至でそれを行なっている。 対米従属だけの日本の外交が劣化していくのは当然である。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)