□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月4日発行 第76号 ■ ============================================================= 政策論争のむなしさーすべての政策は選挙につながる ============================================================== すべての政策は選挙につながる。 これはもちろん誇張である。 しかし、情報月刊誌「選択」2月号の「画餅に終わる民主党の待機児童 対策」という記事を読むと、つくづくそう思い知らされる。 その記事の言わんとするところはこうだ。 1月21日、菅民主党政権は、2013年には幼稚園と保育園の一体化 となる「こども園」(仮称)をスタートさせる方針を発表した。 なぜ幼稚園と保育所の一体化を進めようとしているのか。 それはもちろん待機児童解消の為だ。 子供手当てのばら撒きと並んで、待機児童解消は、子育ては国家が責任を もって行なうべき大事業だとする菅民主党政権の重点施策の一つであると 言われてきた。 我々もそう信じ込まされている。 ところが「選択」の記事によれば、その大きな動機は選挙対策だという。 すなわち自民党時代、幼稚園や保育所は、自民党族議員の票田であった。 だからこそ、自民党政権下でも幼保一体化は検討された事があったが、 幼稚園や保育所を支持する族議員の抵抗で実現が出来なかった経緯があった というのだ。 幼稚園を所管する文部科学省のバックに控えていたのは森喜朗元首相ら 文教族。 保育所側の厚生労働省には故橋本龍太郎元首相ら厚労族が君臨していた。 族議員と関係を築いた業界団体が集票マシーンとなり、自民党政権を支え てきたのだ。 小泉改革の登場で業界団体は自民党から離れたが、幼稚園と保育所だけは 「聖域」として残された。 それは、文教族が小泉首相の出身派閥「清和会」の牙城だったからだ。 小泉首相も身内の抵抗には甘かったのだ。 民主党政権が性急に進める幼保一体化は、そのような自民党の選挙支持 基盤を崩す選挙対策である。 ここまでは、民主党政権の自民党「票田潰し」計画は完璧のように見える、 と「選択」のその記事は言う。 しかし「選択」のその記事は、民主党の政策は大きな障害にぶつかる、 という。 自民党の票田つぶしに目が奪われて、本当の政策にはなりえない、と次の ように書くのである。 すなわち、児童待機をなくそうとする「こども園」の運営には、巨額の 財源が必要となる。民主党の試算によれば6年後には2兆円以上にのぼる という。その手当てのメドはない。 しかも、たとえ民主党政権が将来財源を見つけたとしても、その時には 保育を必要とする子供の数は減っている。 保育所が足りないのはまさに今なのだ。 自民党つぶしのために将来の財政負担を増やす「こども園」という幻に 挑むのではなく、待機児童が偏在する都市部に、今こそ限られた予算を 緊急に投入すべきなのだ、という。 そしてその「選択」の記事はこう締めくくっている。 ・・・「子供たちに夢を実現する力を与えるため、幼保一体化を充実 させます」菅首相は1月24日の施政方針演説で高らかに謳いあげた。 しかし財源と不透明な先行きの前では虚ろにしか響かない・・・ こういう記事を読むと、政治家と官僚に独占されているこの国の政策が つくづく無駄遣いと思えてくる。 おそらくその他のあらゆる政策も、その裏には選挙対策や利権や官僚の 省益や労働組合の利益などがうごめいているのだろう。 名もなき国民の事は二の次なのだろう。 そう考えると、ただでさえ無意味な国会の与野党論戦が、ますます 無意味に思えてくる。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)