□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月3日発行 第75号 ■ ============================================================= エジプト革命の原因は貧困や独裁だけではない ============================================================== エジプトの反政府運動の進展から目が話せない。 なかでも私が注目するのは米国の対応だ。それに追従する日本 政府の対応だ。 そして対米従属の日本のメディアの報道振りだ。 かつて米国が他国の政変に対し、ここまで真剣に、かつ事態の進展に 戸惑いながら、米国の立場を日替わりで発表したことがあっただろうか。 それほどエジプト政権の帰趨は米国にとって重要であるということだ。 そしてもう一つ。菅民主党政権のエジプト情勢に対する対外発言が、 見事にワンテンポ遅れて米国の発表ぶりをなぞっているところだ。 かつてのわが国の中東政策はここまで酷くなかった。 しかし今の日本の中東政策は対米従属の極みである。 そんな米国や日本の対外発言は、エジプト政権の平和的移行であり、 反政府運動の原因となった貧困の解決と政治の民主化である。 エジプト情勢を報じる日本のメディアもその事ばかりを書きたてる。 そんな中で、今回の反政府運動の根底には、エジプトのパレスチナ抑圧 政策への批判がある、と正面から喝破した記事を見つけた。 2月3日の毎日新聞紙上で板垣雄三・東京大学名誉教授がこう喝破する。 「・・・背景として大きいのは、パレスチナ問題におけるエジプトの立ち 位置の問題だ・・・(2000年の第二次インティファーダ(反イスラエル 抵抗闘争)の鎮圧、9・11、米国のアフガン、イラク攻撃、イスラエル のガザ侵攻という流れの中で)イスラエルとの特殊な関係を結び、協力 する(エジプトという)国のあり方への批判が、民衆の間にたまってきて いたと考えるべきだ・・・ムバラク政権は「自由と独立」ではなく、米国 やイスラエルと一緒になって、パレスチナ人やイスラム教徒を抑圧する側に なってしまったと映るのだ・・・今回の動きを、日常生活などへの不満の 破裂とのみでとらえるべきではない。」 その通りである。 日常生活などへの不満から破裂した政権は世界中に無数にある。 そんな破裂に米国が動いたことはない。 果たして今回のエジプトの反政府運動が反イスラエル、反米運動に発展 するかどうか。 それこそが米国の唯一、最大の懸念である。 米国が狼狽する理由がそこにある。 日本政府や日本のメディアがパレスチナ問題に決して言及しない理由も またここにある。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)