□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年1月30日発行 第63号 ■ ============================================================= 菅首相の訪米は延期ではない。訪米出来ないのだ。 ============================================================== やがて1月が終わる。なんとか書き続けられてきた。 私がメルマガの配信を休む時は、コンピューターが故障する時か 私の身に不測の事態が起きる時だ。 そう心に決めて書いている。 そう自分を叱咤しなければ気力が萎えるからだ。 だから休まず書き続ける。 その日の朝に書けない事が予測される時は前日の夜に予約配信する事 にしている。 今日(1月30日)は埼玉での講演があり、まもなく出かけなければ ならない。 そのために今日の配信は昨晩遅く予約配信しておいた。それが銀行マン の話だ。 ところが今朝の新聞でどうしても書かなければならない報道を見つけた。 今書かなければ価値がないニュースだ。どうしても今書いておかねば ならない。そこで急いで書く事にした。 読売と毎日新聞が、菅首相の訪米延期という大スクープを掲載した。 メルマガの読者ならこの事について私が何度も書いてきた事を知って いると思う。 予想通りだ。 だが、その予想の的中振りを自慢したいのではない。 その報道にウソがあるからだ。情報操作の臭いを感じるからだ。 とくに読売はひどい。 国会審議が不透明になってきたため、国会終了の6月下旬に延期したい と日本政府が米国に打診する方向で検討に入ったという。 とんでもないウソだ。 菅首相ははやく訪米したくて仕方がないのだ。 訪米は日本の首相にとっての悲願だ。それをテコに政権強化も図れる。 およそ総理になれるはずのなかった菅首相にとって、そして何時倒れるか わからなくなってきた菅首相にとって、早く行きたいに決まっている。 国会中にダボス会議に行くぐらいだ。国会がどうなろうとも訪米できる のなら、するに決まっている。 今の菅首相の強引振りを考えれば、同僚議員が反対しても、外務官僚が 反対しても、菅首相は押し切る。 それが出来ないのは、今の状況では米国が受け入れないからだ。 その理由はもちろんいくつかある。 菅首相の将来に米国が疑問を持ち始めたのだ。 招待した後にすぐ倒れるようでは困る。 しかしもっと大きな理由は日米同盟の将来を米国が不安視しているからだ。 その最大の理由は辺野古沖での新飛行場建設に黄色の信号が出始めている からだ。 それが赤信号になればもはや訪米の意味はない。 いくら菅首相が日米同盟の深化を謳おうとしても米国はその気になれない。 この点に関してはまだ毎日新聞のほうが良心的だ。 米国側が受け入れに消極的であることにも言及している。 その中には菅首相訪米をめぐる日米の駆け引きや、官邸と外務省のズレに ついての貴重な情報も含まれている。 それを読むと国民はまったくだまされていたこともわかる。 それにしても他の新聞、とくに米国の代弁者のごとき朝日新聞がひと言も 触れていないのはどうしたことだろう。 私は間違いなくこう思っている。 菅首相の訪米延期の危険性は、とっくの昔からあったのだ。 政府関係者や官僚はもとより、そこから情報をもらっているメディアも 知っていた。 問題は、それを何時、どのような形で書くか、だ。 それを書くタイミングと書き方によっては菅首相の命運が終わる。 朝日はそのタイミングを見はからっていたのではないか。 それを読売と毎日が、スクープ目当てに出し抜いたのではないか。 その書き方を工夫すれば書いてもいいだろうと抜け駆けして。 あるいは朝日に先駆けて毎日と読売は菅首相を見限ったのかもしれない。 おそらく菅首相の訪米延期記事はこれから堰を切って報じられるだろう。 それが報じられれば訪じられるほど、辺野古移設問題の解決は難しくなる だろう。 ウソが隠しおおせなくなるからだ。 菅首相の訪米延期はやがて雪だるまのようになって菅首相の訪米中止に 向けて加速していくだろう。 訪米できない事が決定的になった時点で菅首相は頓死する。 ここまで書いて私は埼玉に向かって急ぐことにする。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)