□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年1月28日発行 第58号 ■ ============================================================= 日銀決定会議の議事録公開をどう読むか ============================================================== 今日(1月28日)の各紙は、27日に公開された日銀の政策決定 会合議事録(2000年7月―12月)を大きく取り上げている。 この議事録に関心が集中するのは、その政策決定会合の時期が、 いわゆるゼロ金利解除(引き上げ)を決めた重要な時期であったからだ。 そしてこのゼロ金利解除問題は今でも日本の経済・金融政策の大問題で あるからだ。 しかし私が注目したのはゼロ金利政策そのものの是非ではない。 一つにはゼロ金利解除に反対する政府の猛烈な圧力である。 「政府は日銀の独立性を尊重する」と繰り返してきた歴代大蔵、財務 大臣の決まり文句がまったくウソだということだ。 それよりも私が注目したのは、各紙の論調が、政府の反対を押し切って ゼロ金利解除を決めた日銀に対する批判一色に塗りつぶされていることだ。 それを決断した速水総裁(当時)が悪者にされていることだ。 各紙はこぞって同じような記事を書いている。 すなわち政府に反対して強硬にゼロ金利に踏み切った日銀。しかしその 直後にITバブルが崩壊し、わずか3ヶ月でゼロ金利を復活せざるを得なく なった。日銀の独立性にこだわった速水総裁の判断ミスであり、「失政」 の烙印を押されてもやむをえない、と。 もちろん各紙は、ゼロ金利解除の判断は誤りではなかった、結果論だ、 そもそもゼロ金利は金利政策の余地をなくす異常なものだ、などと主張 する元日銀政策委員や専門家の意見も掲載している。 しかしそれらは少数意見に追いやられている。 その一方でまったく抜け落ちている視点がある。 それはそもそも預金者から利息収入を奪い続ける金利ゼロ政策という 収奪政策を米国の圧力で他国に先駆けて取らされた日本政府、大蔵省の 対米従属ぶりである。 そういえば速水総裁は、知る人ぞ知る、財界では稀有な日米軍事同盟に 反対する平和主義者である。 マスコミが悪者にするのも頷ける。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)