□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年1月28日発行 第57号 ■ ============================================================= 金正男氏との単独インタビューを掲載した東京新聞の大スクープ ============================================================== 今日(28日)の新聞で最大の価値のある記事はなんといっても 東京新聞(中日新聞)の金正男氏との単独インタビュー記事である。 近来まれに見る大スクープである。 北朝鮮の金正日総書記の長男である金正男氏(39)が滞在する 中国南部の都市で単独インタビューをしたという。 「正男氏の姿を見かける場所があると聞き、出かけて見た。話し かけると本人と認めた。気さくな雰囲気で、こちらが身分を名乗っても 警戒する様子はなかった。じっくり話を聞かせてほしいと頼み、近くの ホテルの喫茶店に入った・・・」 こう語る外信部・五味洋治記者の接触の経緯には驚かされるが、その インタビュー記事の率直さにはもっと驚かされた。 (三男への世襲については)中国の毛沢東でさえ世襲はなかった。 社会主義に合わず、父も反対だった。 (韓国砲撃の背景について)交戦地域のイメージを強調し、核保有や 軍事優先政治に正当性を持たせようとしている人(軍の台頭)がいる。 延坪島事件のような悲劇が起きないよう(弟には)北南関係を調整して 欲しい。 (日本人拉致問題について)遺憾な問題。今のように議論が平行線では 解決は難しい(日朝間の対話再開が必要)。拉致被害者とは会ったことは ないが最近拉致被害者に関する情報管理が厳しくなった。 (2001年5月1日の不法入国についての日本側の処遇)日本政府は ああするしかなかった。むしろ(日本側には)最大限の配慮をして もらった。 (核問題について)北朝鮮の国力は核から生まれており、米国との対決 状況がある限り放棄する可能性は低い。 (弟に対し)北朝鮮が安定し、経済回復を成し遂げ、(国民が)豊に 暮らせるよう(政策を進めるよう)願う。住民に慕われる指導者になって ほしい。弟に対する私の純粋な願いだ。弟に挑戦するとか批判する意味 ではない。 (デノミについて)失敗だった。中国式経済改革、開放に関心を持つ べきだ。 (自分の置かれている状況について)父や親族とは連絡を取っている (暗殺未遂や亡命説は)根拠のないうわさだ。身の危険を感じた事はない。 金正男氏が東京新聞に語った事が真実かどうかはもちろんわからない。 しかしこれほどの情報がかつて報じられたことがあっただろうか。 外務省は金正男氏と接触した事があるのだろうか。 もしなかったとすれば驚くべき怠慢だ。 もし接触しながら金正男氏を活用できていないとすれば驚くべき無能 さだ。 東京新聞の大スクープが我々に教えてくれた事はメディアの取材力如何 ではここまでの情報収集ができるということだ。 政府・外務省の北朝鮮外交は一体これまで何をやって来たのか、その あまりの無能ぶりである。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)