□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年1月25日発行 第50号 ■ ============================================================= 菅政権が行き詰まる外交的問題とは何か -東京新聞に答える ============================================================== きょう1月25日の東京新聞「こちら特報部」は「ガチンコ国会 識者の予測」という記事を特集している。 その中の一人として私のコメントが掲載されている。 メルマガの読者にはそのコメントの背景を知ってもらいたいと 思ったのでこのメルマガで説明させていただきたい。少し長くなるが お付き合い願いたい。 昨日の午後二時過ぎから始まった菅首相の施政方針演説を私はたまたま 自宅で聞いていた。 その時東京新聞から私の携帯に電話が入り意見を聞きたいという。 国会が始まった。菅首相が抱える難題は山積している。その中で外交 問題で行き詰るとしたら何が一番大きな問題であるか、それを天木さんに 予測していただきたい、と。 丁度その時菅首相は施政方針演説で外交部分を話し終えたばかりだった。 私はそのなかで菅首相が、「日米同盟を深化させることで一致しています。 今年の前半に予定されている私の訪米時に・・・」と述べたところに注目 したばかりであった。 私は即座に東京新聞の記者にこう答えた。 「もちろん日米関係です。普天間問題です。訪米できなくなればその 時点で菅首相は終わりになります」、と。 電話の向こうできょとんとする東京新聞の記者に私は要旨次のように 続けた。 「菅首相はたった今施政方針演説で訪米時期を今年の前半に予定されて いると言った。これは6月末までに訪米するということだ。 ついこの間まで訪米は春だと言っていた。それが前原外相の訪米で、 クリントン国務長官が『春の遅い時期』の訪米を歓迎すると言った。 それ以来5月連休の訪米が当然のようにメディアで書かれるようになった。 そして今では菅首相は6月末までに行なうという。 どんどんとずれ込んでいる。これは要するに訪米時期は何時までたっても 決まらないということだ。菅首相がいくら時期を確定し、はやく訪米して 政権浮揚を狙っても米国側が決めないのだ。菅政権が倒れる可能性があると 不安視しているのだ。 菅首相を倒す内政問題は山ほどある。しかしたとえ菅首相が内政問題を 乗り切ったとしても普天間基地移転問題がある。 クリントン国務長官は前原外相に釘をさした。訪米の前提は2プラス2、 すなわち日米外務・防衛協議がまとまることだ、と。つまり2プラス2が まとまらない限り菅首相は訪米できない。 そこで今官僚たちが必死で米側と交渉している。国民の目の届かない ところであらゆる譲歩を重ねて米国の要求を飲もうとしている。その中心は 辺野古沖に最新型の新飛行場をつくる事である。 しかし辺野古沖の新飛行場建設は、米海兵隊のグアム移転とは何の関係も ない在日米軍基地の新設・強化である。 日米双方はあたかも在沖縄海兵隊のグアム移転と引き換えに代替飛行場を 辺野古に作らなければならないように日本国民を思い込ませているが、 実態はそうではない。米国は自らの軍事戦略上あらたな飛行場をつくりたい のだ。しかもそれを住民の危険が少なくなる場所に作りたいのだ。日本の 資金で沖縄に最新式の飛行場を建設したいのだ。 この真実を日本共産党や社民党が国会でもっと大声で追及すれば国民は 気づく。しかし今の護憲政党はもはやその役目を果たせなくなった。せめて 大手メディアがそれを国民に知らせるならばば、国民は気づく。そして怒る。 反基地感情が一気に高まる。辺野古に新飛行場は建設出来なくなる。 そうなれば日米合意はまとまらない。菅首相は訪米できなくなる。日米 関係で失敗した日本の首相はたちどころに失脚に追い込まれる。それが戦後 の日本の政治史であった。 菅首相が外交問題で倒れるとすればそれはズバリ辺野古に新飛行場を建設 できなくなった時だ・・」 私の話のポイントは、辺野古沖に新飛行場をつくるという問題の欺瞞を 国民が正しく理解する事が前提である。 しかし今のメディア状況や、総保守化した政治状況を考えると、このまま 政府がごまかして普天間合意を押し通し、それを手土産に訪米する可能性は もちろんある。訪米の成功をテコに政権に居直る可能性はもちろんある。 なんとしてでもそれを防ぎたい、その前に菅政権を退陣に追い込みたい、 そのためにはメディアが正しく報道しなくてはならない。 そういう願いを込めて私は東京新聞に詳しく説明したつもりであったが、 それでもまだ東京新聞の記者は訪米中止の深刻性がピント来ないようで あった。 しかしきょうの東京新聞は、短い文章の中でおおむね私の伝えたい事を 書いてくれていた。 解散・総選挙ではなくて首相交代と明言したつもりはないが、私は民主党 の党首が若手保守政治家に交代したら、自民党と民主党の協力関係は一変 するのではないか、と考えている。 その時は日米同盟で一致する保守大連立の完成となる。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)