□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年1月25日発行 第49号 ■ ============================================================= イスラエル政府の最大のアキレス腱を見つけた ============================================================== パレスチナ問題の解決をパレスチナ人がいくら訴えてもイスラエルの 不正義を正す事はできない。 その最大の理由は米国がその不正義を許しているからだが、実はもう ひとつの大きな理由がある。 それはパレスチナの過激派ハマスは「テロ」だという受け止め方が世界 に流布されているからだ。 ハマスが暴力を止めない限り話し合いは出来ないというイスラエルの 強弁に国際世論が負けているからだ。 しかし、テロや暴力とはまったく無関係な問題で、イスラエル政府が 不正義を行なっているとしたら国際世論はそれを許すだろうか。 それがイスラエルの先住民弾圧である。 浅学な私はまったくその存在を知らなかったのだが、イスラエルは国内に 居住する先住民であるベドウィン(遊牧民)の土地を取り上げ、追い出そう としているという。 この驚くべき事実を教えてくれたのが1月21日の毎日新聞であった。 その要旨はこうだ。 イスラエル南部のネゲブ砂漠には古代から住み着いているアラブ系遊牧民 であるベドウィンが平和裏に暮らしている。 すなわちイスラエル国土の約6割を占めるネゲブ砂漠に約20万人の ベドウィンが住んでいるのだ。 彼らはもちろん1948年の建国前から土地を所有している。 ところがイスラエル政府はベドウィンの居住地を国有地と主張し、彼らを その地から追い出そうと彼らの住宅を取り壊し続けているという。 驚くべき非道さだ。 米国のインディアンといい、豪州のアボリジニといい、およそ原住民を弾圧 することは今では国際社会がこれを許さない。 その国の恥だ。 もしベドウィンがこの所有権を巡って国際的な司法裁判に訴えるなら 間違いなく勝訴するだろう。 イスラエルはアラブの遊牧民ベドウィンを追い出す事は出来ないのだ。 そしてこのベドウィンの先住権は、そのままイスラエル国内のパレスチナ人 の先住権にもつながる。 これはテロとは何の関係もない。暴力に訴えることのない平和なパレスチナ 先住民はイスラエル国内に居続けている。 ベドウィンを追い出せないのと同様にイスラエルは平和なパレスチナ先住民 を追い出す事はできないのだ。 これはパレスチナ問題とは無関係だ。人道上の問題だ。 ベドウィンたちよ。立ち上がってくれ。 先住権を奪うイスラエル政府に平和裏に抵抗してくれ。 法と正義に訴えて国際世論に気づかせてくれ。 いかにイスラエルが先住民を差別し、その基本的人権を奪っているかを。 ベドウィンとの先住権争いはイスラエルのアキレス腱となるかも知れない。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)