□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年1月23日発行 第45号 ■ ============================================================= TPPの「もうひとつの顔」を喝破した日経の解説記事 ============================================================== 私は1月16日のメルマガ第29号でTPPを日米経済摩擦の再来に させてはならない、と書いた。 この懸念を見事に言い当てた記事を1月23日の日経新聞「けいざい解説 ーTPP、もうひとつの顔」という記事の中に見つけた。 TPP推進ばかりが流されるメディアの解説のなかで、ここまでTPPの 本質を言い当てたのはこの記事がはじめてである。 その記事はこう書き始める。 「貿易自由化と聞いて、すぐに頭に浮かぶのは関税撤廃だろう。輸出企業の 目には障壁が取り除かれて輸出を伸ばす商機と映る。(その一方で)農家や 農業団体には、防波堤がなくなり海外産品が押し寄せる脅威に見える・・・」 しかし日経のその記事は、その後次のように続ける。 「ワシントンで開いたTPPに関する(初の)日米協議は落ち着かない 会合だった。米側の担当者が入れ代わり立ち代り会議室に現れ・・・交渉は 24の作業部会があり、日本側に分野ごとに説明する必要があったからだ。 日本にとっては大問題の『関税』は、24分野の一部に過ぎない・・・」 さらにその解説は続く。 「・・・扱う題材は中小企業の貿易促進、規制の統一、競争力強化での協力、 供給チェーンの効率化など。関税を軸とする伝統的な貿易交渉で扱わなかった 課題ばかりだ・・・」、と。 そして極めつけは、その記事の中で頻繁に出てくる「横断的問題」という 言葉である。 これを日経記事は次のように使っている。 「・・・国家のエゴがぶつかり合う『関税』の交渉は簡単ではない。 いくら力業(ちからわざ)が得意な米国でも妥結できるとは限らない・・・ そこで横断的問題が浮上する・・・各国が協力して新しい貿易ルールを つくる作業だ・・・」 まさしくかつての日米経済摩擦で米国が日本を攻めてきた時の手口だ。 日本が対応に窮し、譲歩させられた繰り返しだ。 そのルールづくりとはもちろん米国経済に有利なルールである。その事を 日経の記事はこう書いている。 「米国が議長国となり、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳 会議を開くのが今年の11月。開催地は(オバマ)大統領の故郷ハワイである。 米政府はそれまでに何らかの合意を導き出し、通商政策の成果を内外に誇示 したい・・・」 対米従属の菅政権がTPPを急ぐ理由がここにある。 たとえ貿易自由化が重要で不可避であっても、対米隷従の菅政権下で TPPを急ぐほど危険なことはないのである。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)